vol.1

デジタル世界における マーケティングのあり方

高橋 孝之2020年1月

高橋 孝之

外資系コンサルティングファームのアクセンチュア、日系シンクタンク、P&Gを経て、ハンズオンの事業再生・コンサルティングに従事。ホジョセン設立後は、ほとんどのプロジェクトで責任者を務めている。キノコがとても嫌いで、外食におけるキノコ察知能力に優れる。京都大学法学部、英国グラスゴー大学大学院社会科学研究科卒。修士(国際政治学)。大阪学院大学非常勤講師(2018-19)。

価値提供のプロセスの変化に対応し、顧客との関係性を広げていきたい

2020年も、すでに一ヶ月が過ぎようとしています。今回は、弊社代表取締役の高橋に、2019年の振り返りも含めて、今後のマーケティングの展望について聞きました。

マーケティングはどう変化してきているのか

2019年のマーケティングを振り返って、何か変わったなと思うことはありますか。

うーん、2019年で何かがガラッと変わったというよりは、常に、緩やかに変化が起きているという感じだと思います。

「穏やかな変化」とは?

一つ大きいのは、デジタル分野の発展によって、消費者のライフスタイルが変わってきているということですね。その変化に応じて、マーケターが考えるべきことも少しずつ変化しているといった印象です。

例えば、消費者とのタッチポイントだけをとってみても、昔では考えられないくらいの接点がありますし、パーソナライズといわれるような、一人ひとりに異なるマーケティングも可能になってきています。 ただ個人的には、デジタルの“良し悪し”も同時に存在すると思っていて。

“良し悪し”ですか。

“マーケティングに携わる人間としての良し悪し”ですかね。 デジタルというのは、すべてが数字で簡単にトラックできてしまうこともあり、例えばコンバーション率といったわかりやすい指標を、短期的に追い求めてしまうということがあります。 そのため、売上に直結するフェーズ以外のマーケティングに対する意識が、「デジタルマーケティング」という大きな波によって、薄れてきているようにも感じます。

短絡的な数字だけを求めることが増えてしまっていると

そうですね。マーケティングにデジタルの要素が入ってきたことで、即物的な短期のリターンにすごくフォーカスが置かれるようになりましたが、マーケティングとしてはもう少し広く見たほうがいいんだろうなということを、個人的な問題意識として持っています。 売上に直結することももちろん大切ですが、長い時間をかけてブランドを育てていく「投資」的なマーケティングも必要不可欠だと思います。

ブランドや、それに携わる人々の“哲学”や“誠実さ”を大切にしたい

長期的な視点が必要なのですね。

さらにいえば、もっとブランドやそれに携わる人たちの、“哲学”や“誠実さ”を大切にしたいんですよ。例えば広告でいうと、ストーキングのような「逃げられない」ものや、「だます」ではないけれども、誠実ではないやり方でとにかく目先の利益を追うような広告が、ところどころ見られるようになってきている。近年の広告は、ますます「嫌われる」存在になってきているんですよね。

そうした変化がある中で、ブランドをどのように作っていくのか。もちろんブランドは広告だけで作るものではありませんが、消費者に「愛される」広告にするためにも、ブランドが大切にしている哲学は何なのかというところに立ち返ったり、消費者と誠実に向き合うということだけは、ずっと損ないたくない部分ですね。

デジタル世界の可能性

“哲学”と“誠実さ”ですか。デジタルの流れとは逆の、“人間味”のようなものを感じます。

その観点でいうと、実はデジタルはいろんな可能性を秘めているんですよね。これまではモノを売って終わっていましたが、モノを売って生まれるのはあくまで“利益”であって、“価値”ではありません。モノを実際に消費者に使ってもらうことで、そのプロセスにおいて、はじめてリアルな“価値”が生まれるといえるのですが、デジタルが普及する以前の世界では、このようなプロセスの中で価値を提供することは、非常に困難でした。

しかし、デジタルに囲まれた世界では、それが可能になってきています。そのためメーカーサイドの役割としては、売って終わりではなく、この使ってもらうプロセスの中で、どのように価値を提供していくのか、というところが、非常に重要になってくると思います。

例えば、購買後のデータの活用などでしょうか。

それもありますが、方法は自由です。例えばコーヒー豆を売ったとして、そのコーヒー豆を計量カップですくうと、付属のアプリでその日のカフェイン摂取量が測定できるようにする、といったことが考えられます。

こうしたサービスを提供することによって、コーヒー豆を売って終わりではなく、消費者の「コーヒーを飲む」という生活にまで様々な影響を与えることができるようになります。つまり、提供者側による、サービスの影響の範囲が広くなっていくと考えられるのです。

これはデジタルならではの試みであり、オフラインの閉じた世界では到底できなかったような関係性を構築することができる時代になったといえます。 個人特定性の高いデータを駆使し、デジタルで広告をやって売り上げを増やすといういわゆる「デジタルマーケティング」ではなくて、そのもっと外側にある、“デジタルを使ったマーケティング”というものをやっていって、価値の提供手段を広げ、顧客との関係性を広くとることのほうが、これから重要になってくるかなと思っています。

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