コラム

2軸で表現するポジショニングマップに潜む2つの問題点

解説記事
執筆
高橋 孝之
公開日
2022年9月29日
更新日
2022年10月1日

ポジショニングとは、
世の中にない意思決定の軸を提案することです。


ポジショニングを築くことは、マーケティングの目的そのもの

ポジショニングの大家アル・ライズとジャック・トラウトは1972年の論文 The positioning era cometh (Ries, A. and Trout, J., Advatising Age, April 24, 1972, pp. 35-38) で次のように述べました。

The big breakthrough came when people started thinking of positioning not as something the client does before the advertising is prepared, but as the very objective of the advertising itself.

(訳) ポジショニングのことを、広告を準備する前に広告主が実施する「何か」ではなく、広告の目的そのものだという認識が進めば、大きなブレイクスルーが起きるだろう。

Ries and Trout, The positioning era cometh

広告はマーケティングの目的では決してありませんが、この文章の言わんとしていることは、マーケティングの目的はポジショニングを築くことだというシンプルなメッセージです。

2軸(2次元)のポジショニングマップの問題点

ポジショニングといえば、2軸(2次元)のポジショニングマップを思い浮かべる方も多いと思います。コレスポンデンス分析やMDS(多次元尺度構成法)などの統計処理であったり、ワークショップなどの定性的理解を通じて得られる下図のようなマップです。

よくある2軸のポジショニングマップの例

このような整理は現状の理解ツールとしては便利なのですが、マーケティング戦略、ポジショニング戦略の立案には、以下の2点の理由から使いづらいのです。

ポジショニングマップの各軸は、本来消費者の意思決定の軸になる要素を反映しなければなりません。ですが、多くの場合ポジショニングマップの軸として採用される要素は、ブランドイメージ上の違いを反映したものであって、意思決定の軸になっていないケースがほとんどです。意思決定と無関係にプロットされた2次元マップ上で見つけたホワイトスペースにどこまで価値があるでしょうか。おそらく、ポジショニングのためのポジショニングになることでしょう。これが第一の課題です。

第二の課題は、議論が2次元上のポジションに集約されてしまう点です。仮に2軸が意思決定の軸であったとしても、その2次元上で議論してしまうと、自然と既存の意思決定の軸に従って考えることになります。しかし、ポジショニング戦略において重要なのは、既存の軸に従って自分たちのポジションを確立することよりも、新たな軸を作り出して自分たちをできる限りユニークな存在へと作り変えることなのです。既存の2軸で議論してしまうと、新たな軸の視点が抜け落ちることになります。

考えるべきは、他とは違う1本の軸

定義すべき新たなポジショニングとは、他と自分たちとを強烈に分けるような1本の軸を見つけることなのです。そしてその軸を意思決定上、重要な軸に変化させていくことが、ポジショニング戦略であり、ポジショニング戦略の実行のもつ意味です。

どんな軸で市場を見つめたら、今の市場とは異なる姿が浮かび上がってくるか。それをさまざまなデータや情報をもとに試行錯誤し、考えることが大切です。

PlayStation 2という高度な技術で市場を席巻していた据置ゲーム市場に、「家族が誰でも楽しめるゲーム」というまったく異なる新しい軸を提案したのが、任天堂のWiiでした。これぞまさにポジショニング戦略の妙です。既存の市場を見つめることも重要ですが、ポジショニング戦略を考える上でもっとも重要なのは、まだ見えていない、あなたのためだけの軸を探すことです。

ホジョセンは、クライアントのためだけの軸を徹底的に考え抜きます。ポジショニングにお困りでしたら、お気軽にご相談ください。

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