やってみてわかったオンラインインタビューの罠と、その対応策

高橋 孝之

コロナ禍でマーケティング界隈もさまざまな影響を受けました。広告を取りやめたブランド、イベントを延期したブランド、New Normalに対応するために訴求を修正したブランド、さまざまだったと想像します。

市場調査(マーケティングリサーチ、ユーザーリサーチ、呼び方はなんとでも)も例外ではありませんでした。定量調査は、消費者の心理的変化の真っ只中であったため、実施に慎重さが要求されるようになりました。また、インターネット調査以外の調査手法は選びづらくなりましたが、これはコロナ禍以前からの傾向で、大きな影響はなかったかもしれません。

調査の観点で考えれば、定量調査よりも定性調査の方が影響は大きかったと言えます。訪問調査は軒並みストップ、弊社ではほとんど実施しませんが、グループインタビュー(FGI)もやりづらくなりました。ショップアロングといわれる店頭・棚前調査も実施しづらくなっています。そのような中、代替案として活用されているのがオンラインインタビューです。

オンラインインタビューとは、通常オフラインで実施されている定性調査をオンラインで実施するインタビューです。インタビュールームの代わりに活用されるのが、調査会社さんが独自でもっているインタビューシステムであったり、ZoomやGoogle Meetなどのウェブ会議システムです。

調査会社さんが用意しているインタビューシステムは、かゆいところに手が届くきめ細かなサービスであると同時に、システム利用料が大きく乗ってきます。インタビュールームを借りる費用と比べても高額となるケースも多く、便利なのは知っていても予算が潤沢ではないプロジェクトではなかなか活用できないのも、また事実です。

そういうプロジェクトにとって貴重なのが、ZoomやGoogle Meetといったウェブ会議システムを利用したインタビュー。もともと契約しているケースも多く、追加投資なしでインタビューができることもあり、最近のスタンダードとなっているのではないでしょうか。

オンラインインタビューの罠

しかし、ウェブ会議システムを活用したオンラインインタビューには、大きな罠がいくつか存在しています。

観察者がバレる罠

第一に、ウェブ会議参加人数が可視化されてしまうため、調査対象者に見学者のことがバレてしまうこと。通常のオフラインインタビューでは、バックルームやミラールームで観察しているため、対象者の皆さんは、鏡の向こうがアヤシイなあと感じることはあるかもしれませんが、何人いるかはわかりませんし、意識することはほとんどありませんでした(きっと)。ですが、ウェブ会議ですと、人数が露骨にでます。Zoomのウェビナー機能を使うことで人数だけにすることは可能ですが、Meetを何も考えずに使うと、下手したらバックルームで観察している人の顔までずらずら並ぶことになりかねません。

これにより、対象者に萎縮が発生するリスクがあります。意識してか、無意識かはともかく、本心ではなく、聞いている人のことを慮って回答しがちになるでしょう。また、ほかの人には聞かれたくないような、比較的センシティブな内容 — たとえば金融資産の話であったり、恋愛の話であったり — を自発的に発話してくれる可能性が減ってしまいます。一言でいえば、多くの人間が観察していることが伝わってしまうことによって、対象者に「アウェイ感」を抱かせてしまう問題があります。

余談ですが、訪問調査の場合は、何人が話を聞いているかは当然対象者にも分かっています。ですが、訪問調査の場合、対象者の自宅という「ホーム」でインタビューがおこなわれるため、このアウェイ感の問題は起こりづらいです。

画面共有でもたつく罠

第二に、提示物を見せる際のゴタゴタがあります。オフラインインタビューでは、提示物は通常紙に印刷してお見せします。ですが、オンラインインタビューではデータを送るわけにもいかないですし、画面共有というウェブ会議の仕組みを使って提示することが一般的です。この画面共有ですが、すんなり行くケースばかりではなく、意図しない画面を共有してしまったり(たとえばモデレーターへのインプット用のSlackの画面を共有してしまったり、なぜかデスクトップ全画面を共有してしまって雑多なファイルを見られてしまったり、など)、もしくはモデレーター自身が画面共有を使い慣れておらず手間取ってしまったり、画面共有を解除し忘れて赤裸々なコメントを書いたのを見られてしまったり、と。

モデレーターの中には、「わたしパソコンわからないのよー」と宣言される方もいます。それは仕方がないです。モデレーターはインタビューのプロであって、ウェブ会議システムのプロではないわけですから。とはいったものの、きちんと提示物を見てもらうためには画面共有をしっかりと使いこなしていただく必要があるのですが、やはり難しいわけです。また微妙にウェブ会議システムによっても使い方が異なるため、全部を抑えておいてもらうことを期待するのもちょっとな、という気持ちにもなります。

いずれにせよ、提示物を対象者に見せる際、スムーズにいかずに時間をロスしたり、見せてはいけないものを見せてしまったり、と画面共有周りにはオンラインインタビューならではの問題が潜んでいます。

いつの間にかピンされてる罠

最後に、第二の罠と似ていますが、対象者側の「ピン」によって画面共有が働かないケースがあります。ウェブ会議システムを使い慣れている方でしたらあまり問題にはならないのですが、まだまだウェブ会議に不慣れな対象者さんもいらっしゃいます。その時に、意図してかせずしてかはともかく、モデレーターの顔をピンしてしまうケースがあります。ピンされると常にモデレーターが相手に投影されている状態になるのですが、その状態で何かしら提示物があって画面共有をしたとしても、共有された画面を見つけられない、という問題が発生します。

これはすこしのやり取りで解消できるのですが、前述の通りモデレーターはインタビューのプロであってシステムの使い方のプロではありませんから、上手にインストラクションができるとは限りません。

罠を回避するような仕組み

このように、オンラインインタビューにウェブ会議システムを用いることは、いくつかの罠を内包しています。素直に調査会社のシステムを使えばいいという意見もあるでしょうが、これらの罠をどのように仕組みで排除できるかをホジョセンは考えてみました。そうしてたどり着いたCBA(Current Best Approach、今考えられるベストなやり方)は以下のような構成です。

オンライン上でも、インタビュールームとバックルームを分ける

この構成では、対象者とインタビューをおこなうプラットフォームと、クライアントや代理店、弊社の人間がインタビューを観察するプラットフォームを分けています。オフラインでいうところの「インタビュールーム」に相当するのが、赤い点線で囲まれた部分。モデレーターと対象者がZoomでインタビューを実施します。その際、Zoom上にはモデレーターと対象者しかいない状態です。

そして、その「インタビュールーム」としてのZoomを、Google Meetを通じて配信します。観察者はGoogle Meetに集まり、Zoomの配信を見ながら、必要に応じて追加質問等をGoogle Meetのチャットに記載します。これはオフラインインタビューでは「追加質問を書いた付箋をインタビュールームに持っていく」ことに相当します。モデレーターはGoogle Meetのチャットを見ながら、インタビューを進めていきます。

この構成のメリットは、対象者にはモデレーターしか見えないことと、バックルーム側は自由にコメントができる(対象者に読まれない)ことです。Google MeetはChrome上で動作しますので、配信用PCでChromeの音声のみをミュートしておけば、バックルームで自由に議論しながらインタビューを見ることも可能です(けど、気が散るのでおススメしません)。

画面共有をできる限り使わない

次に、画面共有の問題に取り組みます。画面共有における問題点(前述の2つめ、3つめ)は、操作の複雑さによる部分が大きいと考えています。モデレーターの顔を見せる・見るだけでしたら、問題は発生しないのです。

そこを逆手にとり、配信用PCのカメラを乗っ取ることで対応します。具体的には、映像のスイッチャー(セレクター)と呼ばれる機器を間に挟み、スイッチャー自体をWebカメラとして動作させます。スイッチャーには提示物の画面とモデレーターを映すためのカメラを接続し、スイッチャーからの出力をすべてそのままZoomで配信します。

通常は、カメラを出力しておけばモデレーターの顔が対象者に配信されますが、何らかの提示物を見せたいときには、提示物を出力しているPCにスイッチャー上で切り替えるだけですみます。ホジョセンでは、ATEM Miniという機器を使っています。映像だけではなく音声も入出力ができるので、映像を見せる際でも対応できるのでとてもおススメです。ボタン一つで出力映像も切り替えられますし、モデレーターが複雑な画面共有を実施する必要がありません。

ATEM MiniをWebカメラとして動作させていますので、対象者がモデレーターをピンしていても問題にはなりませんし、モデレーター側もボタンを押すだけで画面を切り替えることができるので、インタビューに集中できるというメリットがあります。

さて、Web会議システムを活用したオンラインインタビューの罠を、最小限のコストでできるだけ補う仕組みを考えてみました。これはなにぶんバージョン1にすぎず、たぶんもっといいアイディアがあると思いますので、ぜひ僕個人のTwitter会社のTwitterなどで教えてください!

仕組みよりも大切なこと

そして、もっと重要なことは、この仕組みがあったとしても、それはデータを取得する環境が整ったというだけでしかありません。きちんと調査の準備をし、対象者の話をよく聴き解釈し、次のアクションへと結びつけなければいけません。

有意義な定性調査を実施したいブランドの皆様は、ぜひホジョセンまでお声がけください!


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