コラム
前回の最後の部分:それでも「全員に受けるほうがよりいいじゃないか」という反論がきそうです。でも、これはNoなんですね。そのあたりは次回、「2位じゃダメなんですか?」でお話しします。
というわけで、今回は「2位じゃダメなんですか?」という某国会議員で話題になったお話について。
前回は、セグメンテーションを行い、PPという「ズバリ」のターゲットを定義する必要があるという話でした。全員にウケるものではなく、PPにウケるものを作っていきましょう、というお話。
そうすると、通常こんな反論が来ます:「全員からウケたほうがいいに決まっている」
これ、ある条件下において正しいんです。どういうことかというと、全員からウケるものを作る・提供することができる場合には正しいです。でも、実際難しいですよね?
想像してみてください。美容院Xに行く23歳のAさん、美容院Yに行く29歳のBさん、美容院Zに行く33歳のCさん、美容院Wに行く44歳のDさん、美容院Kに行く51歳のEさんに、美容院Pに行く64歳のFさん。全員からウケるような店を作るのはとても大変です。
なんとなくわかりにくい気もするので、みなさんの周りの人を想像してみてください。隣りに座っている若い新卒の女の子、厳しい目で見てくる上司、正面に座っている脳天気な男性社員、、、、これらの方々がともに好きになるような美容院を作るということ。ふたりだけでも難しそうでしょう!!! それに社長さんを加え、部長を加え、お若い受付嬢もつけて、せっかくなのでビルの管理人さんも入れてしまうと、もう無理と諦めそうなもんです。
でも、頑張ってみるんです。みんなが好きになるようなのを作ってみる。
どういうことが起こるのか。答えは簡単なんです。仮に作れたとして、どんなものになるのか。それは、誰にとっても…(略)、「まあ、いい」お店になるんですよね。
だって、好み違うじゃないですか。「最高!」を全員で共有はできないんですよね。そうなると、万人受けするけど、熱狂的に愛されることはない、「まあ、いい」お店ができあがることは自明なのです。
「まあ、いい」お店は、みんなにとって「どちらかといえば好き」なお店になってます。でも、部長さんにとって「一番好きな最高のお店」ではないんですよね。社長さんにとっても(略)。つまり、みんなにとって2番手、もしくはそれ以下のお店になってしまいます。
じゃー、実際に部長さんが気合を入れて髪を切りに行くとしたら、どのお店に行くんでしょう? きっと「一番好きな最高のお店」に行くんですよね。社長さんも、受付嬢さんも、ビルの管理人さんも上司も、きっと自分にとって一番好きな店に行くんです。
つまり、みんなにとってウケるお店を作った結果、誰にとっても一番のお店にならず、結局お客さんは来なくなるってことになります。
つまり、2位じゃダメなんです。1位じゃないと、選んでもらえないんです。
全員から2位を取るのであれば、1/3の人から1位をとって、残りの人からビリを取るほうがいいのです。
ちょっと乱暴な言い方をすると、この1/3のうちのコアな人、つまり「ちょーさいこー。なにもいうことなし」みたいな反応をする人がPPにあたります。そして、「さいこー。完璧じゃないけど、一番いいよね」みたいな人がターゲットセグメントにあたります。PPで1位になれば、その人と同じではないけど似たような考えをする人の中でも1位になる、というのは消費者マーケテイングの定石です。
重要なのは、1位になること。2位に甘んじないこと。そして、PPをしっかりと定義し、彼ら彼女らをいろいろな側面から理解して、彼らにとって圧倒的1位になるようなお店や広告、商品を提供すること。
まだまだやれることはあります。がんばりましょー。
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