コラム
デパート王と呼ばれ、マーケティングの先駆者ともいわれるジョン・ワナメーカーはこう嘆いたといいます。どの広告に、どれくらいの資金を注入すればよいかわからない。この疑問は、19世紀から現代まで続くマーケターの悩みの種のひとつです。ですが、21世紀のいま、ワナメーカーの悩みである広告効果の測定はMarketing Mix Modeling(MMM)によって解決することができます。
Marketing Mix Modelingには、さまざまなデータをインプット(説明変数)として使用します。基本はマーケティング施策関連データと、マーケティングのパフォーマンス指標(結果指標)ですが、中間指標データを組み込むことも可能です。
Marketing Mix Modelingをはじめとする広告効果測定において重要な議論のひとつとして、Ad stockとwear-outがあります。これがMarketing Mix Modelingを難しくしているといって過言ではありません。
Ad stock(Carry-over effect)とは、広告の残存効果のことです。たとえばTVCMは放映されたその瞬間にのみ影響があるわけではありません。TVCMは人の頭に記憶され、放映されていない翌週、翌々週にも影響を発揮することがあります。このように、広告は残存効果をもつ(ものもある)ため、Ad stockを正しく推定することは、Marketing Mix Modelingにおいてとても重要になってきます。
Wear-outとは、「飽き」を表象しています。同じ広告を何度も何度も見せられると、その広告に対して消費者は飽きを覚えます。結果として、広告量が大きくなればなるほど、広告効果は減衰していくことがわかっています。Marketing Mix Modelingにおいても、このwear-out効果を正しく推定しなければ、その広告の正しいパフォーマンスを評価することができなくなります。
Marketing Mix Modelingは、売上やシェアといった応答変数に対して広告宣伝という説明変数がどのように影響を与えるのかを統計的に解析する手法です。したがって、Marketing Mix Modelingにおいては、重要な前提仮説として、「広告宣伝によって、消費者は即座に(応答変数に対する)行動をとった」を設定します。Ad stockなどの考え方によって多少後ろ倒しすることは可能なのですが、たとえば住宅や自動車のように、広告を見てから数か月~数年後に購買行動にあらわれることが珍しくないカテゴリにおいては、Marketing Mix Modelingはあまり向いていません。
その際には、なんらかの中間指標に対してモデルを組むことは考えられます。たとえば、ウェブサイトの訪問数やブランド名の検索クエリ数など、ビジネスに好影響を与えると考えられる中間指標を応答変数におくことをお勧めしています。
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2022年9月29日 高橋 孝之