組織を育てるということ

高橋 孝之

サクセッションプランという言葉があります。これは本来事業継承や次世代 CEO の育成に使われる言葉なのでしょうが、最近は人材の適材適所の配備と責任や権限の空白化を防ぐというもう少し広い意味で使われることが多い気がします。僕が働いていた企業でも、後者の意味で使っていたように思います。

後者の意味で使われるサクセッションプランは、階層の上下に拘わらずいかなる階層でも適応する概念です。そのためには、次のリーダー候補となる人材のプールを常にキープしておき、穴が開いたところに適切なタイミングで埋めていく、という長期的な計画性のある人材育成が必要になってきます。

中小企業もコンサルティングさせていただきましたが、小さい企業になればなるほどこれは思いの外難しいことだと実感しています。いくつかのチャレンジはあるのですが、ざっくり言うと、

  1. 能力が属人的で、組織の能力に昇華していない
  2. そもそもリーダーがいない(と経営陣が思っている)
  3. サクセッションプランの概念が浸透していないため、人事異動や組織編成が計画的でない

といった点が挙げられます。

能力が属人的で、組織の能力に昇華していない

サクセッションプランを成功させるためには、属人的な知識を集合知に変える必要があります。個人の経験のみでは限定的ですので、他人の経験を次のリーダーの経験として上乗せしなければ、よほどのスーパーマンでない限り、望ましいパフォーマンスを発揮できません。

集合知化というのはなかなか簡単ではなく、プロセスの整備や文化の醸成が必要になってきます。だからこそ、経営陣の強いコミットメントが必要になってくるでしょう。

そもそもリーダーがいない(と経営陣が思っている)

これは経営陣にしばしば見られる誤解です。自社の人材に対して信頼が薄い。リーダー候補をリーダーとして扱わず、いつまでたっても作業者として扱ってしまい、次のリーダーが育たない、というケースは意外と多いのではないかと思います。

中小企業はなかなか外部から人材を引っ張ってくることが難しいわけで、自社の中でリーダーを育成することは必須だといえるでしょう。たとえ結果的に外部の人材を招聘するにせよ、内部における育成を放棄してしまうことは将来的に大きなマイナスになると思います。

サクセッションプランの概念が浸透していないため、人事異動や組織編成が計画的でない

サクセッションプランの概念が浸透していない場合、上司は部下の次のポジションをあまり意識しない傾向にあるようです。中小企業になれば組織の流動性が低くなるため、ことさらこの傾向は顕著です。サクセッションプランが文化として根付いている場合、各個人をどのようなポジションにつけるのか、そのために必要な経験は何で、与えなければならない試練はなんなのか、という議論が行われているようです。僕が働かせていただいた外資系企業では、業種にかぎらずこれがしっかりとしていました。人材の流動性が高い欧米の会社だからこそ、の仕組みかもしれません。

人材育成の観点を抜きにした人事異動を見ると、本当にモッタイナイと思います。これは、経営陣が従業員に対して、おそらく辞めることはない、きっといつまでも自分の会社のために働いてくれるだろう、という甘えから生じているのかもしれません。

小さい企業であればあるほど、人材の育成は重要になってきます。組織の流動性を担保しにくい中、またポジションが非常に限られている中、人材を育成していくのは非常に難しいことですが、中長期的視野で組織を作り上げていくのは、経営者にとって重要な仕事だと言えるのではないでしょうか。

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