初めての定性調査(インタビュー調査)で役立つ「聴き方のコツ」5つ

高橋 孝之

定性調査(インタビュー調査)って難しいんですよね。取得した情報を可視化することが難しかったり、分析総合が標準化されておらず属人的になってしまったり、結果をもとに偉い人を説得しづらかったり、とさまざまなハードルが思い浮かびます。

そんな数多あるハードルの中でももっとも大きなハードルのひとつが、「聴き方」がわからない、かと思います。ここでいう「聴き方」は「どのようにして尋ねるか」という手法の話ではなくて、「聴く姿勢」のことです。手法としての「尋ね方」は、きちんと調査設計を作り込める人にお願いすればなんとかなるんですが、調査に参加するにあたって、インタビューをどのように聴き込んでいけばいいかという「聴く姿勢」については参加者個人に委ねられることも多く、またきちんとしたトレーニングを受けることもないのではないか、と思います。

そんなわけで、今回のホジョセンコラムは、初めての定性調査に臨む新米マーケター・リサーチャーへ贈る「聴く姿勢5か条」です。

聴く姿勢その1: 対象者はみな合理的だと心得よう

対象者って、面白い人が多いんですよ。とりわけ定性調査の場合、いわゆる「普通」の人ではなく、何かしらとんがった人にインタビューをすることが設計上多いので、なおさらです。そうなると、いろんな意味で、わけのわからない人に遭遇します。マーケター個人の主観的論理ではまったく成立しないような論理で動いている人が、かなりの確率で登場します。

こういう人を見ると、定性調査初心者のマーケターは、非合理的な行動をとっている人だと判断してしまいがちですが、これが大きな罠。何が合理的で、何が合理的ではないかを決めるのは、本人の優先事項や価値観です。自分自身の価値観では合理的ではないと感じても、対象者の価値観では合理的なことはあるのです。自分自身の価値観で評価することなく、対象者の考え、合理性を理解するという姿勢で調査に臨むのが大切です。

聴く姿勢その2: 自分の知識は捨てよう

自分の(マーケターの)知識が仇になるケースは、2パターンあります。ひとつは、対象者が知識として持っていない場合、その知識がない前提での論理展開に気づけない可能性があるということ、もうひとつが、対象者が「話し手の知識が豊富だ」と気づいてしまうことで、「変なことは言えない」という萎縮が発生することです。

前者の例としては、たとえばある商品を大好きな対象者がいたとします。その商品は有名人を活用したTVCMを大々的にオンエアしていることを、マーケターは知っています。その商品を好きだといった瞬間に、(声に出すか心の中でかはともかく)「あー、今CMすごく流れてますものね!」と反応してしまうようなケースです。その対象者は、TVCMを見た上で大好きになって購入しているとは一言も言っていません。こういう決めつけは危険です。

インタビュー調査に参加しているマーケターは、何も知らないように振る舞うのがベストです。ある商品について話をしている場合、その商品について何も知らないから教えてもらう、という姿勢のほうが、対象者の観点での商品の位置づけをより明確に理解できるでしょう。

後者のケースもたまにめぐりあいます。たとえば、「あの洗剤は◯◯の成分が多いので、よく落ちるんですよ」という発言に対して、「✕✕の洗剤にも◯◯の成分が同じくらい入っているのですが??」みたいな反応をしてしまうケースですね。こういう反応をされてしまうと、以降対象者の方は何も言えなくなってしまいます。しかも、洗剤のプロだとバレるので、いいことありません。相手がプロだ、詳しい人だと感じ取られてしまうと、テストされているような気分になるんですよね。

対象者の行動に影響するのは、対象者の持つ知識なんだというマインドセットで臨むのが大切です。

聴く姿勢その3:情報収集ではなく、情報を通じた文脈の理解を心がけよう

定性調査において文脈はとても重要です。文脈とは、対象者の行為や発言、評価などの意味を決定づけるストーリーのことです。この文脈は、ひとりひとり異なっていますし、ひとりの個人が複数の文脈をもっています。そして文脈こそが対象者の論理に大きな影響を与えます

情報を収集しようとするのではなく、情報を通じて文脈の理解をしようとする姿勢が大切です。

たとえばヨーグルトのインタビュー調査だったとしても、ヨーグルトの話ばかりしていては文脈が理解できません。たとえば「朝の準備」というシーンについて多くの情報を収集し、それらを結びつけていくことで、ヨーグルトの「朝の準備」というシーンにおける意味が固まっていきます。顔を洗うこと、トイレに行くこと、歯を磨くこと、洋服を選ぶこと、などさまざまな行為が一つの文脈の中で独自の意味を持ってきます。その文脈の中におけるヨーグルトの位置づけや他の情報との関係性を理解することで、対象者の意思決定や考え方のパターンなどが明らかになっていきます。商品に関するインタビューだったとしても、中心にあるのは文脈であって、その文脈において商品がどういう意味を持つのかを考えることが大切です。中心に商品をおいてしまうと、正しい理解ができなくなります。

ここでいう情報とは、言語情報に限りません。表情や口調、しぐさなどの非言語情報も貴重です。ホジョセンでは、定性調査の際に、訪問調査と呼ばれる対象者のご自宅に伺ってインタビューを行う手法を採用することがほとんどです。対象者の自宅でインタビューを行うことで、インタビュールームでは到底得ることのできない周辺情報をたくさん取得することができ、それだけ文脈理解も深まります。文脈の理解が深まれば、商品や対象者の行動メカニズムなどの理解も、より本質的なものへと深化します。

難しいのは、どういう文脈を設定するかです。対象者は文脈を意識しているわけではありません。文脈は、インタビューの参加者が見つけなければならないのです。文脈が異なれば、収集すべき情報(の視点)も異なります。インタビューのなるべく早い段階で、いくつかの文脈仮説を築き、それらに従ってインタビューを進めていくことが重要です。もちろん事前に仮説として文脈を設定することも可能です。価値観ベースのセグメンテーションは非常に強力な文脈を構成する事が多いので、個人的には仮説の軸としてオススメしています。

余談ですが、分析をする際には「脱文脈化」と呼ばれる、対象者の文脈から切り離して発言を分析することも多々あります。各対象者の文脈から外された個々の情報を共通概念で括り、いくつかのストーリーに紡ぎあげる作業(「再文脈化」)を行うことで、理解を深めます。

聴く姿勢その4: 比較対照を意識しよう

多様な文脈が、対象者の「意味の世界」を構築しています。定性調査では、個々人を対象に調査を行いますが、その特定個人について理解を深めたいわけではありません。あくまで、個々人を対象に調査を行う目的は、そこから適度に抽象化された「理論」や「概念」を構築することにあります。

対象者の世界と理論の世界

対象者個人にだけ注目してしまうと、何が広く共通する特性で、何が対象者個人にユニークなのかが掴み取れません。理論化していくにあたって、共通項と独自項をきちんと切り分けで抽出する作業はキモです。そのためにも、「他の人」や「他の時間」「他のシチュエーション」「他の文脈」など、さまざまな比較対照情報が必要です。

比較対照情報が欠落してしまうと、その後の分析にも支障がでます。定性調査は、インタビュー時間以外に追加情報を得ることができない調査ですので、聴いている最中に「比較対照軸が存在しているかどうか?」を常に意識し、適切な比較軸がなければきちんと聴取するように心がけましょう。

聴く姿勢その5: 楽しもう!

最後に。とにかくインタビューを楽しみましょう! エウレカ!! 楽しんだ調査のほうが、きっと得るものも多いですよ。ただし、分析時のバイアスにもなりかねないので、そこは大人に。

ホジョセンでは、定性調査を数多く実施していますし、マーケティングを考える上で最重要視しています。定性調査をマーケティング戦略・戦術に活かしたい方は、お気軽にお問い合わせください!

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