コラム

ブランドづくりの基本アプローチ

解説記事
執筆
高橋 孝之
公開日
2022年9月29日
更新日
2024年4月3日

ブランドには、譲れない哲学が不可欠です。

ブランドづくり(ブランディング)と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか? ロゴやデザインの変更をまっさきに想起する方も多いのではないかと思います。

ホジョセンは、ブランドの哲学を重要視しています。自分たちのブランドの存在意義はなにか、どういう人たちのためにあるのか、何をコミットできるのか、それが実現できる十分な根拠はあるのか、などなど。ブランドづくりにおいてもっとも重要なことは、決して譲ることのないブランドの哲学だと考えています。そして、その哲学をどのように表現し、発信し、共感してもらうのか、その手段の一つとして、例に挙げたロゴやデザインの変更を考えていくようにしています。

以下で、ブランドづくりに関するホジョセンの取り組みをご紹介します。

ブランドの歴史や信念を洗い出す

ホジョセンのブランディングプロジェクトの多くは、ブランドの歴史や信念を洗い出すところからスタートします。新しいブランドを作る場合であっても、関係する親ブランドやコーポレートブランドなどについて、しっかりと考えを深めることから始めます。

ブランドの歴史を理解することで、どういうビジョンでブランドを作ってきたのか、長い歴史の中で「変えてこなかったこと」はなんなのか、大切にしてきたことはなにか、そういった軸、つまりブランドの信念が見えてきます。もちろん、その軸は将来的に変更になる可能性はあるのですが、思考を深めていく上で整理することはとても大切なステップになります。

歴史を通じてブランドの信念を理解するにはさまざまな方法がありますが、ホジョセンでよく採用する方法は、

  1. ブランドを昔から知っている社内の人にインタビューをする。特に、現場で長く活躍されてきた人にインタビューをすることで、貴重な示唆が得られるケースが多いです。
  2. 創業者・ブランド立ち上げ者にインタビューをする。創業者やブランドを立ち上げた方は、そのブランドについてとりわけ熱い想いを持っていることが多いです。
  3. 社史や過去の広告宣伝物をレビューする。社史は、成功体験や危機の克服体験の宝庫です。それを追体験することで、ブランドの葛藤や挑戦を理解します。同様に広告宣伝物を時系列にレビューすることで、共通項を明らかにしていきます。

などです。実際には、プロジェクトごとに最適な方法を個別具体的に考え、ご提案します。

価値マップの作成

並行して、価値マップの作成を進めていきます。価値マップとは、そのブランドの持つ「価値」をさまざまな観点でまとめたものです。価値と価値の間の関係性を記述することもあります。機能的な価値だけでなく、情緒的な価値も探索します。また、価値には価値の源泉となる要素も存在します。価値の源泉も合わせて考えていくことで、ブランドの意味を深掘りします。

価値マップを作成するためには、ブランドの「いいところ」「らしいところ」に関する情報を幅広く得ることが肝要です。そのために、ホジョセンでは以下のようなアプローチを取ることが多いです。

  1. ブランドの大ファンにインタビューを行う
  2. 全従業員にブランドのいいところを語ってもらう

全従業員に語ってもらうことは、とても時間のかかるプロセスですが、さまざまな発見があるためオススメしています。意外な共通項が見つかるケースも多く、知見を深めることが可能です。企業規模によっては難しいことも多々あると思いますが、1,000人くらいまでの企業さんであれば、十分に実施が可能です。ブランドに対する理解を深めるためにも、スケジュールを確保されることを強く推奨しています。

ブランドの言語化

ブランドの価値を可視化することができれば、それらを集約、分類していくことフェーズに入ります。ただ、これがとても難しい。ブランドの真の価値を、短い言葉で言語化するには、言葉の持つ意味を考え抜く必要があるのです。

たとえば、「楽しい」という言葉。自ブランドの定義する「楽しい」はどういうことなのかを考え抜きます。世の中にはさまざまな「楽しい」が存在しています。その「楽しい」を自分たちはどのように定義するのか、それを全員が同じ理解をするために、どのように表現するのか。繊細で哲学的な議論が発生することになります。

実際に、さくらインターネットさんと実施したリブランディングプロジェクトでは、「インターネット」という言葉について、社長も含めて議論をしつづけました。

ひとことでブランドの言語化といっても、何を言語化すればいいのかわかりづらいかもしれません。世の中には、さまざまなブランド定義のフォーマットが提案されています。代表的なものとして、電通が提唱する電通ハニカムモデル、P&Gで使用していた(している?)エクイティピラミッド、フランスのカプフェレ教授のブランドアイデンティティプリズム、Mats Urdeのコーポレートブランドアイデンティティマトリックス(CBIM)、ちょっと複雑ではありますが欧州を中心に流行っているBrandKey Modelなどがあり、クライアントに合わせて最適なフォーマットを選んでいます。

電通ハニカムモデルの例

インターナルブランディングという鬼門

ブランドを浸透させていくにあたり、当然外部に発信していくことになります。ここまでしっかりと考えられていれば、外部発信に関して大きな障害はないでしょう。ですが、ブランドづくりにおいてとても大変なのが、社内発信、つまりインターナルブランディング(インナーブランディングとも)です。従業員やスタッフが、ブランドを強化するような行動を取ってもらうことが、ブランドづくりにおいては欠かせません。

広告素材やロゴは、一度作ってしまえば勝手に変わることはないですよね。非常に安定しています。ですが、従業員はどうでしょうか? 従業員も立派な外部接点です。接客や営業でお客さんとコミュニケーションを取ることも多いでしょう。テレビCMは作ったとおりに放送されますが、従業員のコミュニケーションは決めたとおりになされるわけではありません。だって、人間ですから。自分で考えて行動します。これが、ブランドのゆらぎ、ブレを生むことになります。

ブランドづくりにおいて重要なのは、一貫性です。常に同じベクトルを持つこと、一貫して同じことを発信することが大切です。そして、一貫性を最も持ちにくいのが、従業員によるコミュニケーションです。だからこそ、インターナルブランディングと呼ばれる、従業員やスタッフがブランドを壊すことなく作っていくための活動が必要になります。社内研修やワークショップを開催したり、ブランドブックと呼ばれるブランドの考えをまとめた冊子を作ったり、評価項目と統合したり、とクライアントの状況に応じて施策は変わりますが、各社工夫してブランドの浸透を図ります。

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