コラム

欲張らない~ターゲットを絞る

マーケのヒント
執筆
高橋 孝之
公開日
2015年11月13日
更新日
2022年9月29日

「お客さまを理解する」と言っても、お客さまは千差万別です。実際にお客さまと話をし1:1で対応できる現場と異なり、バックオフィスにいるマーケターとしてはどうすればいいのでしょうか。1億3000万人の日本人全員と話をすることができれば問題は解決なのですが、そんな時間もお金も人的資源もありません。

そこで出てくるのが「セグメンテーション」と「プライムプロスペクト(Prime Prospect、以下PP)」という概念です。

添付の図を御覧ください。2本の矢印はヒトの価値観の軸を表しています。軸が相互独立(=2軸間に一切の関連性がない)の場合、軸は直行しますが、今回は便宜上斜めになってます。その辺は気にしないでください。また、軸の数は2本とは限りませんが、通常2本程度で分けます。その理由は複雑になればなるほど使いものにならない、という人間の能力の限界がメインでしょうか。

添付の図にはA~Eの5つのセグメントが存在しています。これは、ヒトを価値観で分けたとき、おおよそ5つの価値観で説明できるということと同値です。価値観が行動パターンを決定する、というのは心理学的マーケティングの王道であって、この価値観は基本的に不変です。外部環境によって行動パターンが変わることはあっても、価値観は変わらないというのが通説だと思ってください。

ちょっとわかりにくいと思いますので、血液型で考えてもいいかもしれません。A型、B型、O型、AB型という4つに人間は分けられますが、仮にこの分け方がマーケティング上有意な分け方ならば、この差によって行動パターンが規定される、といったものです。これがセグメンテーション。

もう一つのPPですが、これはセグメンテーションよりも小さい話です。あるセグメントをメインターゲットとしたときに、その中でも本当にズバリのターゲットのことをPPといいます。通常商品やコンセプト、チラシや広告を作るときにはPPに受けるものを作るのが普通のマーケティングになります。

さて、今回のお題の「欲張らない」ですけれども、これはこのセグメンテーションとPPに係わってくる話になります。

僕らが商品を提供する場合、もしくはサービスを提供する場合、ありがちな罠として「誰からもイイと言われたい」ということがあります。この例でいうと、セグメントA~Eのすべての人に受け入れられるサービスの提供をしたがる、というのが罠にあたります。

シェア100%を目指しているならともかく、実際のところビジネスは、そうではありません。大企業の寡占マーケットでもシェア20%も取れたら十分であることがほとんどですし、小さい企業となれば1%で満足ということもあるでしょう。これはどういうことかというと、全員に好かれなくてもいい、ということなんですよね。すごい極端な話、全日本人の10%から本当に受けるサービスを提供できた場合、シェアはおそらく軽く25%は行くことでしょう。なぜ10%じゃないかはまた別の機会に。

まあ、つまり、全員に受けなくても十分に市場を取り込むことができる、というのは自明なのであります。全員に受けるものを作るより、ごく一部の人に受けるものを作るほうが楽ですよね。5人全員がOKというものと、そのうち1人だけがOKというもの、明らかに後者のほうが楽です。前者は大変です。大変、というと「頑張ればなんとかできる」なんて考えてしまいがちですが、基本的に無理です。Twitterとか見たらわかるでしょ、同じものをみんなが愛でることなんて、ありえないんですよ。

セグメンテーションをしっかりと行い、PPをきちんと定義する。これをすることによって、マーケティング活動はより効率的になりますし、一貫性を帯びたものになります。一貫性があれば、過去のマーケティング活動が蓄積されてより効果がでることになります。逆に言えば、セグメンテーションやPPの定義がないマーケティングは、消費者中心のマーケティング活動ではないですし、持続可能なものではないと言えるかと思います。

結局のところ、ターゲットを絞り込むのは、マーケット全体において自分たちを選んでもらう確率を最大化するために実施するのです。ターゲットを絞ると売上が下がる、という懸念はよく耳にします。たとえば、「全員に受けるほうがよりいいじゃないか」という反論がきそうです。でも、これはNoなんですね。そのあたりは次回、「2位じゃダメなんですか?」でお話しします。

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