コラム

上市後レビューに役立つ!売れていない理由 7つのパターン~消費財編

マーケのヒント
執筆
赤間 かおり
公開日
2020年8月26日
更新日
2023年5月9日

「君の担当しているあの商品売れてないな、何でだ?」と聞かれて、理由がわからず、焦った経験はないでしょうか。このブログ記事では、売れていない理由を特定するための考え方と、売れていない理由の7つのパターン及び、それぞれの原因についてご紹介します。

本コラムの最後に、売れていない理由を探すのに使用できる売上構造を分解したチェックリストもご用意していますので、そちらも是非ご活用してください。

今回は、主にオフラインで事業を行っている商品、サービス、主として消費財を想定しています。ECを主戦場としている事業は施策への反応が直接数字で取得できるので、もう少し違ったアプローチが考えられるかもしれません。それはまた別の機会にお話ししたいと思います。

目次

何と比べてどのくらい売れていないのか、基準を明らかにする

「君の担当しているあの商品売れてないな、何でだ?」と言われたら、まずどうしますか?とにかくガムシャラに原因を探しはじめてはいないでしょうか。ちょっと待ってください!! それはあまりよいアプローチではないかもしれません。

売れていない原因を探し始める前に、まずは、何を基準として売れていないのか(目標値?昨対?競合?)、どの程度売れていないのか(深刻さの程度)を明らかにすることが必要です。これを怠ってしまうと、関係者間の課題認識が異なり、「売れていない理由探し」の全工程がムダになってしまう可能性があります。

また、ここを予め明らかにしておくことで、「売れていない原因をいろいろ調べてみたが、そもそも売れていないという認識自体が勘違いだった」という、たびたび発生するガックリな事態を防ぐことができます。

売上発生メカニズムで分解し、課題がどこにあるのかを明らかにする

基準が明らかになったら、基準と比較して何が課題で売上が悪いという結果が生まれているのかを考えていきます。市場メカニズム(市場において何をめぐって戦っているのか)を念頭に、売上発生のメカニズムを分解し、ポイント毎に基準と比較し課題を見つけます。

売上メカニズムを分解する時には二つ、重要な点があります。一つ目は、次の打ち手につなげられるように、外部要因に重きをおきすぎず、自社でコントロール可能な要素で考えることです。二つ目は、売上発生メカニズムの各ポイントについて、基準と比較して課題を見つけられるよう、基準がどの程度の成績なのかが(できるだけ正確に)わかっていることです。昨対値や競合比など、基準と比較して客観的に数値で判断できれば、より精度高く分析できることが期待できます。

では実際に、売上メカニズムを考えてみましょう。

消費者の視点で、どこに課題があるのか(何で負けているのか)を理解しようとした時に、例えばこれは一例ですが、

売上*1 = 購入者数 × (一人当たり購入量 × 購入単価) *2

に分解することができます。

消費者視点の売上発生のメカニズム 例

また、「購入者数」については、これもまた一例ですが、リピート購入に至るまで、

日本居住者*3 > 認知者 > カテゴリーユーザー > 購入意向者 > 購入者 > リピート購入者

にファネルを分解できます。

リピート購入までのファネル 例

上記をまとめると、売上は、消費者の視点で以下のように分解できるということになります。その場合、売れない理由は7つのパターンとして考えることができます。

消費者視点の売上分解 例
  1. 認知者:商品が知られていない
  2. カテゴリーユーザー:このカテゴリーを購入する人が少ない
  3. 購入意向者:知られているが、買いたい気持ちにならない
  4. 購入者:買いたいと思っているが、実際には買われていない
  5. リピート購入者:一度買って離反されてしまう
  6. 単価:販売(購入)価格が予定を下回っている
  7. 購入量:購入者一人あたりの購入量が少ない

*1:売上ではなくシェアを第一階層として捉えようとすることもできますが、「シェア拡張」を目的とした場合には、市場を狭めるとシェアは増加するが売り上げが下がるという懸念があるので、打ち手を考える時に注意が必要という取り扱いの難しさがあります。

*2:店頭小売店で販売される商品の製造業は、売上発生のタイミングは卸・小売店への販売なので、厳密には、直接的に消費者個人の購入金額へ分類することはできませんが、今回は消費者にフォーカスをあてこのようにメカニズムを分類しています。

*3:売上発生メカニズムの「人」の要素を、分析データの準備のしやすさや市場の範囲の観点から「日本居住者」を起点として考えましたが、実際には、日本居住者以外のインバウンド消費の影響も一定規模売上への影響を占めているかもしれません。ただ、インバウンド購入者は、認知の仕方、選定時の重視点、購入者に伝わっている情報、購入量など、日本居住者とは買われ方が違うと考えられますし、対象として行うマーケティング施策も異なるため、日本居住者とは分けて課題を見つけるのがよいと思われます。

売れていない理由7つのパターン

以降は、この売れない理由の7つのパターンに対して、それぞれ原因を考えていきます。繰り返し強調しておきますが、基準や期待と比べてうまくいった、うまくいっていないを評価すべきです。

[理由1]認知者 : 商品が知られていない

消費者が商品を認知するのには、テレビCMをはじめとした広告やPRを見聞きする、お店で商品を見る、街中で看板を見る、試供品を使う、SNSや口コミ・レビューを見聞きしたりするなどがありますが、その中でも、最も認知獲得に有効なコミュニケーション施策は広告投下です。

では、期待と比べて認知が取れていないことがわかった場合、何を考えるべきでしょうか?

商品が知られていない原因はコミュニケーションの不足が大きいですが、コミュニケーションの不足には、量の不足と質の不足の2つの面が考えられます。量の不足とは、テレビCMのGRP(延べ視聴率)やWEB広告の表示回数(impression数 )*4など、広告の露出量の不足で、質の不足とは、AIDMAモデルでいうAttention(注目させる)、Memory(記憶させる)が機能しているクリエイティブの質が低いことを指します*5

Attentionには、強いコミュニケーションメッセージ、ユニークな広告ストーリー、ユニークな広告表現、カテゴリらしさ・ブランドらしさなどが有効だと言われています。また、Memoryは「商品特長」と「ブランド」の両方を記憶してもらうことが必要ですが、商品特長とブランドとを結び付けて記憶してもらうには、広告のストーリーやインパクトが有効です。したがって、広告のストーリーが効果的である時、Attentionに偏らず、 Memoryと両立させることができると考えられます。一方で、例えば、注目度の高いタレントのキャスティングは、Attentionには有用ですが、商品特長やブランドを理解し覚えてもらうことへの効果は薄いと考えられますし、カテゴリらしさを感じるクリエイティブは、例えばビールユーザーに「ビールのCMだ」というAttentionを与えるのには有用ですが、ブランドを思い浮かべてもらう効果は薄いでしょう。また、インパクトを狙った広告の場合、ともすればAttentionに偏ってしまう恐れがあり、商品特長とブランドとが結びつかなくなる恐れがあります。

また、獲得した認知も永遠に続くものではありません。認知から時間が経つに連れて認知の深さも認知者数も逓減します。「発売後しばらくして認知が下がってしまった」というご相談を頂くことがありますが、広告投下をやめていることがほとんどです。コカ・コーラのように、誰もが知っていて、生活の中で絶えず触れる機会のある定番品になるまでは継続的な認知獲得施策が必要です。

ここまでは、お買物の場に来る前のコミュニケーション施策についてお話ししてきましたが、お買物の場に来る前に商品を知らなくても、売場で認知を獲得するということもあり得ます。

たとえば、店頭小売店の場合、棚で適切に目立ち(Stop)、どのような商品かを伝えること(Hold)ができれば、店頭で認知を獲得することができます(そして背中を押すこと:Closeができれば、購買につなげることができます)。店頭での認知獲得施策としては、定番棚以外での露出(関連陳列、エンド陳列、山積み陳列など)や、棚内で目立つ仕掛け(棚内の位置、商品パッケージ、アテンションシール、POPなど)が考えられます。

ちなみに。店頭で認知獲得も可能であるのに、来店前に認知を獲得していることは、どのような意味を持つのでしょうか。来店前に商品が知られていれば、「店頭で指名で探してもらえる」ことの他、「店頭で与えられる以上のブランド理解があり、情報を総合してブランドイメージを築くことで、購買につなげられる」ということが期待できるでしょう。

期待と比べて認知が取れていないケースでは、これらに課題があることがほとんどですので、上記ポイントを重点的に検証していくことをお勧めします。

*4:Web広告は、imp数が少ない単位から出稿が可能なので低価格から始められるという利点がありますが、目標売上から逆算して必要な認知者数を獲得することを踏まえると、結果的にTVCMの方が生活者一人当たりのリーチコストが安いことも多く、認知獲得にはまだまだテレビCMが有用なことが多いのが現状です。

*5:広告には認知獲得以外にも、DAGMAR理論で定義されるように「理解促進」「確信付与」「行動喚起」といった役割を果たす場合もあります。興味関心の喚起や購入を促すのに望ましいイメージを醸成するという視点でもクリエイティブの「質」を議論する必要があります。

[理由2]カテゴリーユーザー : そもそもこのカテゴリーを購入する人が少ない

カテゴリーユーザーが期待よりも少ない原因は、

  • 未だできたばかりの新しい市場である
  • 衰退した市場である
  • そもそも対象となる人が少ない市場である

が考えられます。

新しい市場である場合は、未だ当該ニーズを持っている消費者が少ないと考えられます。市場を大きくするために、インサイトを創出し、ニーズを喚起する必要があります。もしもカテゴリーユーザーが期待よりも少ない場合、ニーズの喚起に失敗していることを疑いましょう。

一方で、衰退市場である場合は、新規市場と同様に新しいニーズを喚起し市場を育てていくか、コストを極力かけずに見守るか(または撤退するか)の意思決定が将来的には必要です。期待よりもカテゴリーユーザーが少ない場合、想定以上に衰退が速いわけですから、自社の施策がニーズを再喚起できていたのか、疑うことが必要になります。

三点目のそもそも対象となる人が少ない市場とは、例えば、ベビーベッドのように、そもそもターゲットが限定的である場合です。狙えるカテゴリユーザー数の上限が低い場合、その規模を念頭におく必要があります。このケースは、その商品の売上に問題があるというよりも、事前の期待が高すぎることがほとんどです。

[理由3]購入意向 : 知られているが、買いたい気持ちにならない

購入意向に課題がある原因は、

  • 消費者に醸成したいイメージが醸成できていない
  • 消費者に伝えようとしている情報が購入意向を醸成するのに十分でない
  • 消費者に伝えたい魅力(イメージ)が伝わった人数が少ない

が考えられます。

ブランドイメージは、消費者の全ての体験から醸成されますが、ブランドイメージを構成する各要素の購入意向への影響の度合いは、要素毎に異なります。ブランドイメージが狙った通りに醸成されていない時に、購入意向へ影響の強い要素が伝わっていないと、その他の要素が伝わっていても購入意向が十分に醸成されない可能性があります。

また、購入意向への各要素の影響度合いが、個人の特徴に応じて異なる可能性があります。例えば、ビールの購入意向は、糖質を気にする人にとっては「ヘルシー、糖質オフ」のイメージが購入意向への影響が大きく、しっかりとしたビールらしい美味しさを楽しみたい人にとっては「コクがある」や「王道ビールらしさ」のイメージが購入意向への影響が大きいというような形です。購入意向を醸成するためには、狙った人に狙ったイメージを形成できるようなコミュニケーションが必要です。

二点目について、消費者に商品の購入意向を醸成するために、どのような情報を伝える必要があるでしょうか。それは、便益RTB(Reason To Believe)です。また、商品の便益と消費者の選択視点とがマッチしていない時や、競合と比べて劣位である時には、コンテクストの設計を行うことも必要です。

便益*6とは、消費者がその商品を購入する理由です。いかに素晴らしい商品か、この製品によって消費者は何を達成することができるのかを伝えることが必要です。製品性能で差別化できない場合は、商品の素晴らしさだけで買いたい気持ちを醸成するのは難しいので、その商品によって達成できることを伝えることが有効です。

RTB*7とは、便益が本当に実現されると消費者が信じることができる理由です。新技術や専門家の声、実験結果、ブランドの存在そのものなどがなり得ます。

コンテクストとは、消費者が商品を選択する時の便益の重要度を変化させるような周辺情報や刺激です。消費者に新たな気づきを与え、カテゴリと結び付けて認識させることで、消費者にカテゴリ購入時の選択視点を変化させ、行動の変化を促し、自社商品を選択してもらうことを狙います。

自社商品へ消費者の行動が向くように便益の重要度が変化するACBを伝えて自社商品の購入意向が醸成される市場環境を創造し、また、その市場環境で確実に自社商品の便益とRTBを伝達することで、購入意向を醸成します。

三点目に関しては、そもそも「認知」の問題である可能性を否定できません。一方で、認知は取れているにもかかわらず、商品に対する理解は期待通りになされていないケースも頻出します。このような場合は、認知を疑うよりもメッセージの表現、クリエイティブのレビューを行うことをお勧めします。とりわけ、コンセプトの段階では十分に評価が高かったにも拘らず、実際の市場において評価されていない場合、コンセプトを広告物に変換する過程において想定外のエラーがあった可能性が高くなります。

補足

実際の店頭での購入意向は、商品自体の魅力度から価格の魅力度が割り引かれます。価格が高くなると購入意向が低下し、反対に、低価格になると購入意向が増加します。(\(Value = \frac{Brand Equity}{price}\))

エンド陳列や山積み陳列は認知や店頭の露出量に影響しますが、エンド陳列や山積み陳列の多くは特売品であるので購入意向への影響も大きいです。

また、価格の魅力度が購入意向へどのくらい影響するかは、カテゴリの特性と個人の特性によって異なります。安売りによって購入意向が大きく高まるカテゴリもありますし、それほど大きな変化がないカテゴリもあります。

*6:個々のコミュニケーションで伝達される便益は、ブランドマネジメントの視点から、醸成したいブランドイメージの延長線上にあるべきだと考えられます。

*7:ホジョセンでは、CMやチラシがどんな意図で作られたのか、便益、RTB、コンテクストを逆から辿るトレーニングを実施しています。ホジョセンおすすめマーケティングのトレーニング法の記事もご参考にしてください。

[理由4]購入者 : 買いたいと思っているが、買われていない

(購入意向が正しく取得できているという前提であれば、)買いたいと思われているのに、買われていない原因は、「消費者が買える環境が用意できていない」ことが考えられます。

店頭小売店で販売される商品の場合、この「買える環境が用意できている」ことを示すのは「配荷率」です。事前の期待や基準に比べて配荷率が低い場合、営業にヒアリングをすることから始めましょう。自問すべきは、事前の期待が高すぎただけなのか、それとも想像以上に苦しんでいるだけなのか、です。

配荷の獲得は、営業の努力ももちろん重要ですが、別の要因も存在します。代表的なのは、露出量です。広く商品が露出されればされるほど、配荷は取りやすくなるといえるでしょう。他にも、小売店にとっての利益率や利益額の多寡、メジャーな商品との消費者のオーバーラップなどが棚の取りにくくなる原因となります。

もし、配荷率が基準と比べて十分高いのに、これが課題である場合は、店頭でショッパーの目に触れる機会に課題がある可能性が考えられます。例えば、棚内の陳列位置や定番棚以外の陳列(エンド陳列、山積み陳列、関連陳列)、商品パッケージやアテンションシールなどです。

[理由1]認知者の章で、「棚で適切に目立ち(Stop)、どのような商品かを伝える(Hold)ことができれば、店頭で認知を獲得することができる」とお話しましたが、Stopが適切に働くことは、「配荷された店頭で確実に商品に気がついてもらえる」ということにも働きます。

街のケーキ屋さんやカフェなどの店舗の場合、「買える環境が用意できている」は、行動可能範囲にお店があることです。どのくらいのコストをかけて「わざわざ来てもらえる」かは購入意向がどの程度醸成されているかによります。

[理由5]リピート購入者 : 一度買って離反されてしまう

リピート購入が発生し得るカテゴリーであるのにも関わらず、リピーターが発生していない原因は、

  • 商品に対して満足が得られない
  • Quality of trialの問題
  • 買える環境が維持できていない

が考えられます。

まず、商品に対して満足が得られないについてですが、商品に満足が得られなかった理由には、「商品自体に問題がある場合」と「購入前のイメージコントロールに問題がある場合」とが考えられます

商品自体(製品の質)に問題がある場合には、例えば「消臭に強い洗濯洗剤」の消臭ビーズが溶けずに衣服に残ってしまうというように、基本的な価値を満たしていないという時のほか、「カラダによいジュース」が、ジュースだから当然おいしいだろうという期待にも拘わらず、美味しくなかったというように、生活者がそのカテゴリに当然期待している最低限の価値を満たしていない時にも起こり得ます。ブランドから積極的に約束していなくても、生活者がカテゴリに期待している価値に不足がある場合も問題になる可能性がある点は注意が必要かもしれません。

購入前のイメージコントロールの問題とは、例えば「香りが長く続く」柔軟剤と期待していたけれど思ったよりも早く香りが消えてしまうと感じるなど、単純に期待していた水準に届いていないことだけでなく、例えば、ジュースに対して「カラダに良い」訴求をすることによって、糖分が少ないことを期待させてしまい、「甘すぎる」という不満を引き起こすのもイメージコントロールの問題です。訴求それ自体だけでなく、そこからイメージされる価値とのギャップによってもイメージコントロールによる不満は起こり得ます。

二点目は、「Quality of trialの問題」です。Quality of trialの問題とは、初回購入理由が「安いから」や「新製品だから」だけの人に偏ってしまっていることを指します。

[理由3]購入意向でもお話したように、購入時の総合的な商品の価値は、商品自体の価値から価格の魅力度が割り引かれたものであるので、商品自体の価値が低いと感じられていても、安売りをすれば価格面での魅力によって、価格を含めた総合的な価値は高まります。したがって、安売りをすれば、これまでの価格では購入に至らなかった人を、価格の力で購入に導くことができ、新規購入者が購入する機会となり得ます。

同様に、新商品好きな人にとっては、「新商品だから」が商品自体の価値に上乗せされて商品が評価されると考えられるので、発売直後の時期は、新商品好きの人が購入してくれる機会多くなります。

ただ、これらの人たちは、商品自体の価値以外に、それぞれ「低価格」「新商品であること」の価値が上乗せされたことで獲得できた人達です。「低価格」「新商品であること」の価値がなくなった時にも商品自体の価値で高評価が得られるように、商品自体の価値を高めることが必要です。それには、商品を体験した後の満足だけでなく、商品価値や商品の選択視点を伝えることによって、狙ったイメージを形成し、狙った軸で評価を得ることで商品評価を高めることが必要なのではないでしょうか。

また、マーケティング施策の設計にあたっては、「低価格」「新商品であること」を理由に、商品価値が伝わっていなくても購入する人が一定層いるということを認識し、トライアル購入獲得施策でそのような人ばかりを多く獲得してしまわないように、商品価値を評価してもらえる層をしっかり獲得できるよう企画することが望まれます。

三点目は、「買える環境が維持できていない」です。ここでの買える環境とは、[理由4]購入者でお話したのと同じ「配荷率」などについてです。

例えば、店頭小売店で販売されている商品の場合、新発売の時期に配荷できていても、その後に売上不振や他社商品の発売によって取り下げとなったり、自社内でフェイスを分け合う形で他商品と差し替えとなったり、元々小売との取り決めによって一定時期の配荷であったりなどによって、配荷が低下しているようなことが見られます。上市直後に問題がなくても、定期的な確認が必要です。まれに、売れすぎによる欠品で配荷が維持できていないこともありますが、そのような時は営業からの声で問題が表面化しやすいので、これには注意を払っていなくても問題をキャッチできるでしょう。

[理由6]単価 : 販売(購入)価格が予定を下回っている

[理由5]までは、売上構成要素のうち、「人(購入者数)」に注目していましたが、[理由6、7]では、売上のもう一翼を担う「購入者一人あたりの購入金額」に視点を移します。まずこの章では、購入単価について考えていきましょう。

消費者への販売(購入)価格が予定を下回っている時には、販売(購入)価格の分布を見て、当初狙った価格の範囲とどのようにずれているのか?を確認します。その分布は、

  • 予定価格より低い価格で集中して買われている(ばらつきが小さい)
  • どんどんと購入価格が低下している、ある時を境に大きく安売りされている
  • 概ね予定価格で買われているが、大きく下回っている時がある(ばらつきが大きい)

などが見られると思います。

予定価格より低い価格で集中して買われているという場合、安売りの時だけ買われているということであり、商品自体の魅力が足りていない、または、十分に伝わっていないという懸念があります。[理由3]購入意向でお話しした通り、商品の購入意向は、商品自体への魅力と価格への魅力から決まるので、価格が低い時しか買われていないということは、商品自体の魅力ではなく価格の魅力に助けられて買われていると考えられるからです。安売りに頼らなくても大丈夫なように、消費者にブランドを醸成していくことが大切です。

また、どんどんと購入価格が低下している場合や、ある時を境に大きく安売りされている場合、通常価格では売れずに値引きがされていたり、売りきりのために大幅値引きがされている可能性があります。これも商品自体の魅力が足りていない、十分に伝わっていないという懸念があります。

三点目の、概ね予定価格で買われているが、大きく下回っていることが発生する場合は、小売店でフロントエンド商品(目玉商品)となっている可能性や、仕入れ値の値引きや販売促進費(リベートなど)によって、店頭で値引きが発生しやすい環境がある可能性が考えられます。価格は、広告とは違って、営業や卸売店、小売店など多くの人が介在していて、ブランドマネージャーのコントロールが難しい点ですが、販売価格が低いことが続いてしまうと、消費者に「その程度の価格のブランド」と思われてブランドを毀損する恐れもあります。一度下がった価格を後から上げるのは大変ですし、ブランドを毀損してしまうと将来の売上へ影響もあります。価格は、将来の資産としてブランドマネジメントの対象であると関係者に共通認識を持ってもらえるようコミュニケーションをとることが理想です。

店頭小売店で販売される商品の製造業の場合、売上発生のタイミングは卸・小売店への販売なので、厳密には、消費者個人の購入金額へ分類することはできませんが、小売店で、特売時しか買われていなかったり、たたき売りされていたりすると、後々には仕入れ価格へ反映されるので、製造業の方も、消費者の購入価格をウォッチしておくことは有意義かと思います。

[理由7]購入量 : 購入者の購入量が少ない

購入量の問題は、いわゆる“ダブルジョバディ”の法則で考える事ができます。

ダブルジョバディとは、消費者の購買は確率的に決定されるという前提で、商品の浸透率(トライアル購入者率)と購入頻度はブランドの購入確率によって決定づけられるという考え方です。ダブルジョバディの法則によると、浸透率に課題がある時、同様に、購入頻度も低くなり、購入者の一定期間内の購入量が少なくなります。浸透率が低くても、顧客へ施策を行うことにより、既存顧客の購入頻度を高めることができるのではないかという考え方もありますが、過去の研究ではそのような例はほとんど観測されていないといいます。

ただ、その中でも、購入頻度(購入量)の上振れ下振れが発生する事もあります。浸透率に対して購入頻度が下振れしている時は、商品に独自性がなく、消費者が他との違いを理解・区別して自社商品を積極的に選んでいる状況でない場合(独自性を高める商品開発のコツの記事もぜひご覧ください)や、[理由5]リピート購入の課題でお話ししたのと同じように商品に満足が得られなかった場合が考えられます。反対に上振れしている例として、ニッチなターゲットに向けたブランドがロイヤルユーザーの育成に成功している場合が考えられます。


今回は、売れていない理由の考え方の一例として、売れていない理由の7つのパターンとそれぞれの原因を見てきました。これらの視点は、売れた時もどこがポイントであったのか、現状の理解に役立つと多います。本ブログの売上構造分解の視点をまとめたチェックリストもご用意していますので、ぜひ、ご担当商品の現状理解にお役立てください。

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