コラム

差別化の難しい消費財のマーケティングについて

Q&A
執筆
金本 奈絵
公開日
2018年3月9日
更新日
2022年9月21日

食品メーカーにてマーケティングを担当する者です。
スーパーなどの消費者との接触点を見てみると競合が多く、陳列の状態は自社商品と他社商品が混交している状態です。そこで、スーパーの棚に競合と共に並んだ時に手に取ってもらえるようなCMを制作しようと考えています。どのようなことを意識して制作を進めたら良いでしょうか。

食品メーカー

CM制作に関してのご相談ですが、まずは消費者が商品を購入する状況について具体的に想像するところから始めてみましょう。

ある金曜日の夜、あなたはスーパーに買い物に訪れました。カップラーメンの陳列棚の前を通り過ぎた時に、ふと「そういえば、カップラーメン切らしてたなぁ」と思い出し、なんとなく気に入った商品を手に取り、それをスーパーのかごの中に入れます。

さてここまでが商品購入の一連の流れとなりますが、ここで今度は一度、あなたがカップラーメンを購入した時の意思決定についてより詳しく考えてみましょう。

当然、価格などの要因は考えられますが、スーパーでカップラーメンを選ぶ時に、わざわざ「このラーメンなら北海道に行った気分が味わえる」「あっちのラーメンはノンフライでカロリーが低いから明日の健康診断には影響なさそうだ」など、一つ一つの商品の便益を、事細かに比較する人はほとんどいないですよね。

恐らくは多くの人が、スーパーの棚に並ぶ、「購入候補」の商品の中からランダムに選んで購入していることかと思います。

つまり、
A)消費者が手に取れる状態にあること(Physical Availability)とB)脳内の深層意識内での選好が高いこと(Mental Availability)が商品の購買を決定していることになります。

まず、A)に関してはスーパーやコンビニ(コンビニだと24時間いつでも買ってもらえますよね)の配荷率を上げることや、棚にある自社商品に近づいてもらうように陳列に工夫を施すことなどが具体的な施策として挙げられます。

続いてB)に関してですが、こちらはイメージがつきにくいので簡単な例と図を用いながら説明したいと思います。

消費者がスーパーを訪れた時に、とあるカテゴリーの商品が4種類存在するとします(商品A-D)。それぞれの商品について、そのカテゴリーにおける消費者の脳内を占める割合は以下の円グラフの通り。全体を100%とすると、商品Aの脳内シェアが一番大きく、次いで商品B、商品C、Dと続きますね。

さて、先述にもあるように、購買の意思決定の段階では、このパイ内から確率的に商品の選択が行われることになります。確率的な選択の元ではどれだけの割合を占めているかが重要になるため、以下のグラフでは、脳内シェアが1番大きい商品Aが選択されやすい状況になっています。

ここで本題に戻りますが、今回の質問者様のような状況で言えば、マーケティング戦略としてMental Availabilityの向上を図るような、消費者の深層意識に残るCM制作を行うことが重要だと考えられます。(理論的な話をすれば、消費者の購買が一回一回独立に行われるとすると消費者の購買はポアソン分布に従い、全ブランドの購買頻度は負の二項分布(Negative Binominal Distribution, NBD)に従うことになります。)

最近のCMでは、深層意識内でのパイを獲得することを目的としているものもちょくちょく見られますので、機会があればぜひ注意深く観察してみてください。

なお、今回取り上げた話は“Ehrenberg-Bass Institute for Marketing Science”の研究により詳しい説明が掲載されています。

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