コラム

「なぜ選ばれているか」ではなく「ブランドイメージ」を理解せよ!

マーケのヒント
執筆
堀井 里奈
公開日
2018年6月4日
更新日
2022年9月30日

「なぜ選ばれているのか」を知る難しさ

私は以前、専門商社で受発注の現場にいた経験があるのですが、お客様との接点が多いにもかかわらず、「なぜ自社が選ばれているのか」ということについて、とても見えづらいなぁと常々思っていました。

お客様と直接お話しする機会を持つことで、その人が何を重視しているのか分かる場合もあるのですが、購買の現場だけでは、お客様がなぜ自社商品を選んだのかについてほとんど聞けないというのが実情です。

自社のどの部分を気に入って注文してもらっているのかが分からないと、その強みを強化しようもなく、いつか他社に移ってしまうのではととても不安になりますよね。

また、業種や商品によっては、購入の意思決定権を持つ人と実際の発注者、および使用者が違うことも往々にしてあります。そうなると、当然それぞれ感じ方、考え方が違って来るわけで、 ますます「なぜ選ばれているのか」を知ることは難しく、それを今後の営業や顧客満足向上に活用するというわけにもいかなくなってしまいます。

なぜ選ばれているのかを本当に理解するためには

では、どのようにすれば自社商品が選ばれる理由を知ることができるのでしょうか。

もし答えを知る目的が売上を上げることなのであれば、まずは消費者が自社ブランドについてどのようなイメージを持っているのかを理解し、その上で答えを探るのがよいかと思います。

というのは、最初から「なぜこの商品を選んだのか」という切り口で答えを探しても、ビジネスに活用できる形としての答えにたどり着くことが難しく、結果的に売上には結びつきにくいからです。

例えば、単刀直入にお客様に「なぜこの商品を選んだのですか?」と聞くとします。すると返ってくる答えはおそらく、その商品自体の強みや、これまでのPR活動を受けてお客様が感じた良さが挙げられると思います。

もちろんそれはブランドが持つひとつの価値なので、営業活動や広告などのビジネスへの活かし方はたくさんあるでしょう。

しかしながら、お客さんがそのブランドを選ぶ際に、強みの部分のみを商品の特徴として捉え、選択しているかというときっとそうではないはずです。選択に至ったブランドに対する認識を正しく把握した上で「なぜ選ばれたのか」を理解しなければ、本当の意味で商品の選ばれる力を上げることはかなわないでしょう。
断片的な強みや良さだけに着目をしてしまうと、かえって見当違いのアクションや、僅かな改善しか得られないアクションになってしまうなんてこともあり得ます。

そういった事を防ぐためにも、選ばれるには一体どのようなブランドの認識をもたれる必要があり、どのような思考の道筋で選択に至ったか。それを明らかにした上で、他の消費者に対し出来得る限りそれらを再現していくことで選ばれる確率は高まっていくのです。

この「どのような思考の道筋で選択に至ったか」については、きちんと調査をすれば「ブランドイメージ」を理解する過程で、自ずとその人が何を重要視し選んだのかが見えてくるはずです。

だからといって、「買わない理由」を理解しようとすることは、得策ではありません。なぜなら、買わない理由を潰したところで「買う理由」にはならないからです。

ブランドイメージとは

「ブランドイメージ」とは、顧客が頭の中で思い浮かべるブランドに対するイメージであり、ブランドの特徴にとどまらず、顧客が感じる親近感や好みなども含まれます。それらは消費者とブランドとの様々な接点を通じて無意識に作られ、その為言葉としての認識はない場合もしばしばあります。

ブランドイメージの形成:各接点から情報を受け取って作られる

卸売業だとすると、お問合わせの電話口や、受領確認・納期のメール返信文、商品の届く早さや、梱包の仕方。また、担当の営業や営業の人が持ってきたチラシ。消費財だと商品のパッケージや使用感なども加わりますね。そういった、ありとあらゆる接点で受け取った情報から消費者は感覚的にイメージを作っていっているのです。

「なぜ選ばれているのか」と、もしお客様に質問した場合、無意識で作られたイメージを正確に言い表すことは普通はできません。その答えは、きっととても言葉にしやすいものが瞬間的に選ばれ、そのブランドイメージの形成するにあたって影響の大きい「ブランドの良さ」が出てくるのではないでしょうか。そして、それはブランドイメージの断片的な、ごく一部分に過ぎません。

例えばですが、安いとか、カッコイイとか、高機能とか。

大事なのはそういった断片的な良さからブランドイメージを読み解くことです。どうやって、ということについては調査のお話になるのでここでは触れませんが、着目したいのは選択する当事者にとってブランドがどのような存在であり、どのような役割を担っているのかということ。

例えばですが、「カッコイイ」とその人にとっては何が良いのか、それを使うことによってどんな気持ちになるのかという切り口で、対象者にインタビューを行うことや、又は実際に購入する現場や使用している現場に立ち会って観察をするなどを行います。

対象者とブランドとの関係性や位置付けを明らかにしていき、その人が感じるブランドイメージを読み取っていきます。

ブランディングのはじめの一歩は、現時点での生活者が連想するブランドイメージを理解すること

現状のブランドイメージを理解するのは2つの意味があります。

  1. ブランドのあるべき姿を決めるための予備的情報を収集する
  2. 消費者のブランドイメージをあるべき姿に近づけていくため

ブランドのあるべき姿とは、「お客さんに自社のブランドがこのようにイメージされたい」「このようにイメージされることで差別化を図り競争優位を獲得したい」という企業の意思であり、目指すべき場所を指します。

その目指すべき場所をしっかりと定義するためにも、現状のブランドが持つ良さはしっかりと拾い集めていく必要があります。それらは紛れもなく今のブランドの持つ資産です。

それらの予備的情報を踏まえて、現状に付け加えたいもの、そして重要なもの、必要のないものの精査をし、よりブランドのあるべき姿を明確にしていくことができるんですね。あるべき姿は、頻繁に変えるべきものではないので、ここはブランドの提供者側が自分たちの意思を入念に固めていく必要があります。

またブランドのあるべき姿が決まると、現状とどう違うのかが見えてくるので、一体どの部分をどれくらい強調して言うべきなのか、どのように認識を近づけていくかを考えることができます。その為にも現状を知ることはとても大事ですし、定期的に消費者にとってのブランドイメージは把握していきたいところですね。

いかがでしたでしょうか。「なぜ選ばれているのか」それを知る目的や、知った後の事を考えるとブランドへの取り組み、そしてブランドイメージを知ることの重要性が見えてきたのではないかと思います。

自社のあるべき姿と現状のギャップがわかれば、ブランド力のアップのための道筋が見えてきます。「なぜ選ばれているのか」が分からずどこに注力して良いのかという不安からは解放され、次のステップへと歩みを進めていけるのではないでしょうか。

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