ホジョセンは、6つの観光協会が並立している豊岡市の国内観光客向けの情報発信のあり方を整理し、2023年にリニューアルした豊岡市観光総合サイトの情報設計をサポートさせていただきました。今回は本プロジェクトのご担当であった佐野様にプロジェクトを振り返っていただきました。
高橋豊岡観光イノベーションさんのご紹介を簡単にお願いします。
佐野さん豊岡観光イノベーションは豊岡市を中心に観光マーケティングを推進するDMOです。地域のステークホルダーの皆様の力を結集し、観光客の視点に立って地域の魅力を再編集して発信していくことにより、稼ぐ力をつけながら地域経済を盛り上げていくことがミッションとなっています。国内集客、海外集客に加えて、観光DXも手掛けています。
高橋今回は国内観光誘客のための情報発信設計をご発注いただきましたが、ご発注の背景を簡単に教えて下さい。
佐野さん豊岡市は1市5町(豊岡市、 城崎町、竹野町、日高町、出石町、但東町)が合併してできた自治体で、1市5町それぞれに観光協会が存在しています。我々としては観光客の皆様に各地域を周遊してほしいと考えているのですが、それぞれの観光協会で情報発信が独立して行われており、うまく連携が取れていないという課題感をぼんやり持っていました。(2020年に策定した豊岡市国内誘客促進強化のための情報発信戦略における)「もう1泊。もう1回。次の豊岡。」の実現のため、観光客の皆様へ情報提供はどうあるべきか、どのような理想像を描き、どのような地域間連携を推進していくべきなのか、各観光協会の現状も踏まえてステークホルダーの皆様が納得した上で前に進むための検討が必要でした。
高橋ホジョセンにお声がけいただいた決め手はなんだったのでしょうか?
佐野さん何回もお仕事させてもらっているからかもしれないですけど、課題をぶつけるとおそらくいい感じで導いてくれるのだろうなっていう期待がホジョセンさんにはあるんですよね。情報の整理の仕方や考え方に信頼感があり、私個人としてだけでなく組織としてもそう感じているように思っています。
今回はステークホルダーの皆様に納得感をもっていただくことが必須で、良い落とし所を探さなければならないプロジェクトだったのですが、こういった複雑に利害が絡み合った課題はホジョセンさんが得意だろうな、という印象もありました。
足立行政やDMOのお仕事だとステークホルダーの方々の利害が一致することは一般企業以上に稀なので、実効性のある施策に落とし込むための調整や他者理解がいつも以上に要求されますね。
佐野さんはい。このプロジェクトでも、各観光協会に対し現状の情報発信状況と課題感に関してのヒアリングをしていただいた上で、ステークホルダーの皆様と対話を深めるべくワークショップを実施してもらいました。ですが、1回目のワークショップでは各ステークホルダーが描く理想像が大きく対立してしまい、今後どうやっても決裂するんじゃないかと心配していたんですよね。
高橋そんなこともありました。あのときは2つの意見で地域が真っ二つに分かれてしまったため、2回目のワークショップでは自分たちの意見に拘らず強制的にどちらかの意見をサポートするというディベート形式を採用したんですよね。
佐野さんそれによってより客観的で全体最適を考える事ができるようになったと思いました。結果的には、片方の意見を主軸としつつ、もう一方の懸念を解消するような提案をしてもらえたと考えていて、こういうまとめ方もあるのだと感心しました。
足立光栄なことにほぼご提案通りにサイトを構築され情報発信されているかと思うのですが、期待通りの成果は上がっていますか?
佐野さん数値的な部分はコロナ禍の影響もあるので一概には断言できないのですが、イベントを除いたアクティビティの申込み数は、リニューアル後の2023年には800近くにまで拡大して、とても忙しくなりました(笑)。加えて、オーガニック流入でサイト回遊をしてもらえるようになったので、広告費を徐々に減らせるようになっています。
数値以外の部分では、今回構築した観光総合サイトをハブとして各観光協会からの情報が集約されるようになったのが大きな前進です。コミュニケーションが密になり、情報が流れるようになりました。各地域にも総合サイトに期待を持っていただいていることが感じられています。
足立もともとの課題感として、ステークホルダー間の連携を強化したいというご要望もあったので、そこが達成されているのは嬉しいですね。
佐野さん総合サイトができたことで、豊岡観光イノベーションとしてできるようになった施策も多く、施策の幅が広がりました。たとえば「豊岡旅幸券(とよおかりょこうけん)」という取り組みは、総合サイトがあって、観光CRMの目指す姿として期待ができる施策だと考えています。
高橋ふるさと納税の返礼品ですね!
佐野さんまた、総合サイトの情報設計の過程で整理していただいた、日本全国の自治体やDMOが管理している観光情報サイトのベンチマークデータは今でもフル活用しています。サイトの改善をする上でもベンチマークデータから優れたサイトを探して、学びながら自分たちに取り入れるようにしています。たとえば最近サイトのフッターを改善したんですが、その際にもデータベースを参照して検討しました。
高橋432の全国の観光情報サイトをいくつかの評価基準に基づいて評価し、観光客数の増減との関連性などを含めてあるべき公式サイトの姿の仮説を作りました。
佐野さんこういった膨大な情報を収集し評価した上での最終提案であって、経験や思い込みに依存するものではないところに安心感があります。
佐野さんまた、ご提案いただいた内容は公式サイトとして達成すべきゴールが非常にユニークでした。消費者行動としての「ベリー摘み型」をベースにして、それに対応させた情報設計案には感心しました。この情報設計の思想は、ユニークで面白いといわれます。
足立プロジェクトの最初期に、佐野さんといっしょに消費者の情報探索行動の仮説をいくつか検討したことが活きたと思います。
佐野さんどんな課題であれ、ホジョセンさんにお渡しすればとりあえず解を導いてくれると思っているのですが、詳細に調べられたデータや事実をもとに私達が進むべき道筋・ストーリーを提案いただけるのは、すごいと思っています。
インバウンド対策も含め、まだまだいろんな課題が残っています。MaaSや観光CRMなどのデジタル技術による事業の進歩も要求されているので、引き続きサポートいただけると嬉しいです。
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