コラム

ブランドイメージ調査の活かし方

Q&A
執筆
尾崎 久恵
公開日
2017年1月10日
更新日
2022年9月29日

BtoCでサービスを提供している企業です。最近、企業ブランドイメージを調査したところ、競合との比較の中で、突出したイメージを持たれていないことがわかりました。しかも、目指していたブランドイメージをすでに競合が持っていることがわかり、ショックを受けています。今後、自社ブランドを見直す必要があるでしょうか?

サービス業

同じようなサービスを同じような価格で提供している競合が何社かある中、企業のブランドイメージをアップさせることで選ばれる企業になっていきたいと考える企業は多いと思います。今回の企業さんの場合は、ブランド調査をしてもらったところ、競合との比較をみて、得ようとしていたイメージをすでに別の競合が持っていたということでショックを受けられたようです。

いざブランドイメージ調査をしてみると、自分たちが持ちたいブランドイメージは持たれていなかった、しかもそのイメージは競合ブランドには持たれてしまっていた…なんてことはブランディングに取り組み始めたばかりの企業では珍しくありません。

残念な現状は真摯に受け止めるとして、ではブランドとしてどうするか? というとき、

  1. ブランドを強化する(持たれたいイメージをつけるために活動する)
  2. ブランドを再構築する(ブランドの方向性を変えて定義し直す)

という2つの選択肢があります。

ブランドを強化する

まず、ブランディングの前提条件として、ブランドのあるべき姿は、各企業が「自ら」決めるものだということを主張したいです。消費者に決めてもらうものではなく…今何らかのイメージをもたれているから、それに合わせる…というものでもありません。もっと内発的に、企業自身の意志でブランドは作っていくものです。

その上で、競合が「目指していたブランドイメージ」をもっていたという今回の状況です。しかし、だからといって「自社ブランドの方向性を変えてまで差別化をしていくべきなのか」となると、しっかり議論をする必要があると思います(ちなみに、ブランドポジションニングの考え方としては差別化よりも独自性が重要です)。企業ブランドとは、長い長い年月をかけて浸透させ、醸成していくものであって、そんなに簡単に変えられるものではないからです。

今のブランド定義を維持する場合、競合が得たかったイメージを既に所持していようが、それを上回るほどに強い自社ブランドのイメージを消費者に植え付けることを目指します。ただし、競合の活動状況によっては大変な苦難が待ち受ける可能性もあります。競合のブランディング活動が巧みであるほど、それを上回って消費者にイメージを刷り込むような活動が必要です。競合の広告投資が大きい場合は自社もある程度投資をしなければなりませんので体力的に厳しく、また戦術的に難しい環境になるかもしれません。継続して取り組むとなれば、ブランド管理者のコミットとリーダーシップも重要になるでしょう。

何をやるのか

どのイメージをどの順で強化するべきか、ブランドイメージ調査の結果から整理しましょう。ブランドで選ばれるという状況は、消費者に特定のブランドイメージを持たれた結果、ブランドの個性を認識され、ブランドに好意を持たれ、関係性が出来上がったうえで発生します。もし、その最初のブランドイメージでつまづいているのであれば、まずはそこを強化していきましょう。

ただし、「楽しい」ブランドと認識されたいとしても、「私たちは楽しいブランドでーす!」とアピールしてもなんの説得力もありません。楽しいブランドである根拠を認識してもらい、楽しいブランドであると評価してもらうのです。根拠は、自分たちのブランドの強みや資源であり、「楽しい」を裏付けるのにふさわしい要素のことです。つまり、「楽しさの根拠」を設定し、消費者にをれを認識してもらい「楽しい」と評価を受けるまでの流れを設計し、様々な消費者のタッチポイントでこれを実践していくことになります。

ホジョセンのブランドイメージ調査「Equity Compass」では、あるべき姿に近づくために、なにをどの順番にやるべきかについて示唆を導くような調査設計を行っています。

ブランドを再構築する

ご相談のように、自社がのぞむブランドイメージを消費者に持たれていないのと同時に、現時点では突出したブランドイメージも持たれていない、といった状況であれば、この機会にブランドを刷新するという方法もあります。その際にはぜひ弊社のコラム「効果的なブランディングのために必要な10のステップ」を参考にしていただきたいのですが、まずは今回のように①現時点で生活者が連想するブランド像を理解する、ことから始めます。そして②生活者に対するブランドの「約束」を定義する、が次のステップとなり、ブランドが生活者に何をもたらすのか、定義していくことになります。

今回のように競合との関係を考えて定義することもありますが、内発的に作っていく方がインナーブランディングとしても浸透しやすいかもしれません。せっかくなのでブランドとして立たせやすい、エッジのきいたものを作ると、ブランド刷新のインパクトも出しやすいと思いますよ。

何をやるのか

自分たちはこうあるべきだ、という自社の哲学についてトコトン話し合うことになります。

ブランドの約束(市場における存在意義)を定義するときには、以下の視点を大事にしてください。

  • 「消費者のニーズ」「ブランドがありたい姿」「ブランドの持つ資産」の3つが交わるところから、定義をする
  • 競合からは離れた・違う軸として明確に定める

消費者ニーズに合わないところ、自分たちが強く望まない方向、ブランドの強みが生かせないところ(ブランドの強みについて、新たに獲得するという場合はこの限りではありません)ではブランドは続けられません。外部的に支持が得られなければ続きませんし、内部的にサポートできなければバラバラになるか十分に活動できなくなりブランドは自己崩壊するか無難な個性のないものになってしまいます。

また、競合から離れれば離れるほど、競合との戦いのための投資をさけることができます。ここを明確にしておけば、競合と競うことなく(= 競合の活動に影響されることなく)ブランドを育てることができます。持ちたいブランドイメージを他社に持たれている、なんて状況もなくなるはずです。

ブランド定義の着地点について、ある程度のところまではロジカルに進めていくことは可能です。が、突き詰められていて自社にしっくりとハマるブランドの約束は当事者の対話を通して落とし込まれていくものです。腰を据えて話し合ってみてください。もちろん、ホジョセンもトコトンお付き合いしています!詳しくは、企業のリブランディング事例:ブランド戦略策定ホジョセンのコンサルティングサービス:ブランドづくりの基本アプローチをご覧ください。

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