いつまでも愛される商品をつくるために。商品価値をあげる法則とは。

堀井 里奈

商品価値を上げるための2つの方法

商品やサービスの価値を上げるための手段は、企業により千差万別なのですが、それらを系統ごとにまとめると、実はたったの2種類しかありません。

「価格を下げる」か「ブランド力を上げる」か。とってもシンプルですよね。

というのも、商品(やサービス)の価値(value)は、以下の式で表されるからです。

ただ、この式だけ見てもあまりピンとこないかもしれないので、1度具体的に事例を当てはめて考えてみましょう。

いま目の前に、全く同じ価格、同じ機能の鞄が2つあります。ひとつはあなたにとっての魅力的なブランドのもの、もう一つはよくあるデザインのノーブランドの鞄です。

想像してみてください。あなたなら二つの鞄のうちどちらの鞄を選びますか??

恐らく、皆さんが選んだのは前者の方ではないでしょうか。価格が同じ場合、上記の式における右辺の分母の値が等しくなるので、分子の値が大きいもの、つまり、あなたにとってブランド力の高い鞄の方が価値のあるものになるわけです。

では今度は、全く同じブランド・同じデザインの鞄が2つあるとします。ただし、1つは1万円、もう1つは5千円だとしたら、あなたはどちらを選びますか?

答えは明白ですよね。当然5千円のものを選ぶはずです。先ほどと同様に、ブランド力が全く同じ場合、式で言う右辺の分子が同じなので、今度は分母である価格の値が小さければ小さいほど価値が大きくなるということです。

もし、自分の好きなブランドの鞄がいつもより安く売っていたら、この金額で高品質のもの(ここで言うブランド力の高いもの)を買えるということに、お得感を感じるし、「今買わないと!」と買うための熱量も上がることでしょう。

値下げによる商品価値の向上は持続不可能

それだったら、時間もコストもかかりそうなブランド力の向上よりも、値下げをすることにより自社商品価値を高める方が手っ取り早いのではないか。大幅値下げはさすがにできないけれど、ちょっとくらいなら・・・・・・

そう考える方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、キャンペーンとして一時的に価格を下げることで、それなりの効果を出している企業はたくさんあると思います。しかしながら、このような値下げ施策を頻繁に行ってしまうことは、恐ろしい負のスパイラルへの第一歩。単純に売上単価を下げるだけでは済まなくなってしまいます。

ではなぜ、商品の値下げを行ってはいけないのでしょうか?

その答えは、一度下げた価格はなかなか上げられないからです。正確には、上げる事はできても消費者が納得して同じように買ってはくれないからです。価格を下げることで、一時的に商品価値が上がるのは上記でも示した通りなのですが、そこで効果があったからといって、安易に値下げを繰り返してしまうと、その内消費者にとって値下げした価格が当たり前になってしまい、そのことにより、上記商品価値の等式の分子であるブランド力が低下してしまいます。

ブランド力が低下するとどうなるのか。皆さんもうお気づきかもしれませんが、この状態で商品価値を維持するには、さらに値下げするしかありません。つまり、値下げ→ブランド力の低下→値下げ→ブランド力の低下→値下げ→ブランド力の低下・・・の無限ループに陥るのです。

当たり前ですが、このような状態で商品価値の向上は持続できないですよね。

今や、代表的なチェーンのお店では牛丼350円が当たり前になりました。しかし、以前はあの味は400円の味だったはず。もっというとワンコインが画期的な時代もあったはずです。「我こそはもっと安価に!」と価格競争を展開してしまった結果、「牛丼は350円」という認識が消費者の中で定着してしまったのです。

スライドのように、価格を下げることによって、一時的に商品価値が上がるものの、その内コスパがいいという認識が薄れてしまい、ブランド力は価格にともなって低下しまいます。

牛丼の場合、今後は何か別の特典をつけなければ400円や500円で売ることは難しく、だからといって、この先200円や100円に価格が下げられるかというと、きっとそれも難しいですよね。価格を下げる度に、自分たちの首をどんどん締めていってしまうなんて・・・オソロシイ

ちなみに、価格を下げることが有効になる施策も中にはあります。例えば、他の商品を一緒に買ってもらう仕組みの中で、1つの商品を目玉として扱う事や既に正規の価格でトライアル済みの方にリピート購入を促す為といったことがそれに当たります。しかしながら、どのような値下げであっても、ブランド力への影響は少なからずありますし、また、施策とカテゴリーとの相性もあるので、どうしても値下げを実施するというときは、よくよく考えた上で実行することお薦めします。

コト視点での商品の良さを強化すべし

したがって、長期的に商品価値を維持する・高めるためには、ブランド力を上げることが必須になるわけですが、困ったことに、ブランド力向上へのアプローチを何もしなければ、たとえ価格を下げるようなことをしなくてもブランド力は低下してしまいます。

では、ブランド力を上げるには、どのようなアプローチをすればいいのでしょうか?

その答えは、「商品の良さを消費者に分かってもらうこと」です。

今回のコラムでは、商品の良さの伝え方については一旦さておき、「商品の良さ」について簡単にですが触れておきたいと思います。

商品の良さとは、それ自体の性能ももちろんですが、それらが持つ世界観やイメージなども含みます。マーケティング的には、これらを「モノ」と「コト」の2つの視点で分類することができます。

モノで見る商品の良さは、いかに素晴らしい製品・サービスであるかという点です。鞄を例にすると、「軽くて使いやすい」、「防水仕様」、「ポケットがあって収納力が高い」などが当てはまります。

対して、コトで見る商品の良さとは、その製品・サービスによって何が達成されるかという「人の視点で見る良さ」です。1例ですが、雨の日でも、どんなに荷物が多くても使い勝手がよい「あなたの仕事をサポートしてくれる鞄」などでしょうか。具体的なターゲットやシーンを設定した上で、それに即した良さという視点で考えていただけるといいと思います。

ここで1つポイントなのは、モノで見る商品の良さは模倣されやすいということです。なので、よっぽどの技術力があり、常に競合の中で1位を獲得し続けない限り、せっかくの「商品の良さ」が有効な売りにはなり辛いですし、製品のモノ的な良さだけでは、「消費者の選択の上位にあがる」可能性は高いのですが、消費行動に直結するわけではありません。

言い換えると、モノ視点での商品の良さを追求してしまうと、ブランド力の維持が難しくなってしまうのです。

一方で、コトで見る商品の良さはどうでしょうか?

一度消費者の認識が定着すると模倣が難しく、なかなかその認識を塗り替えることができません。例えば、一度「安い」という認識が定着するとそれを変えることが難しいように、商品の良さの認識についてもこれは当てはまります。

持続的な商品価値の向上を考えるのであれば、価格や製品そのもの良さだけではなく、その商品を消費する人を想定した上で、商品を通じて何を達成するといいのかというコト視点で自社商品の良さを構築していくといいと思います。

さて、今回は商品価値についていろいろお話させていただきましたがいかがでしたでしょうか。

世にいう代表的なブランドのヴィトンやシャネルは、決して可愛いお値段とはいえませんが、それでもたくさんの人に支持されています。

では、なぜヴィトンやシャネルが選ばれるのか。素材がいいからなど、もちろんそういったモノ的良さもあるかもしれませんが、何より、ヴィトンやシャネルを持つことで「素敵な自分」「おしゃれな自分」「リッチな自分」になれるからです。

継続的に商品価値の向上を図ることは確かに難しいのかもしれません。しかしながら、ヴィトンやシャネルのように、コト視点での商品の良さを磨き上げることで、ブランド力の向上が達成されれば、いつの時代も消費者に選ばれる価値の高い商品になるのではないでしょうか?

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