コラム
消費財メーカーです。
消費財メーカー
この度、新商品を出すことになりました。そこで、新商品のパッケージに対する、消費者の実際の反応を知るためにインタビュー調査を行うことになったのですが、デプスインタビューとグループインタビューのどちらのインタビューを実施しようか迷っています。それぞれどういう場合にうまく活用できるのかを教えてください。
今回のご相談は、「新商品のパッケージの評価のために、デプスインタビューとグループインタビューのどちらを実施しようか迷っている」とのことでしたが、まずはデプスインタビューとグループインタビューの違いについておさらいをしましょう。
デプスインタビューとは、モデレーターと消費者が1対1で行うインタビューを指し、主に一人の消費者について深く理解したいときに用いられる手法です。
対してグループインタビューは、その名の通りグループ(モデレーターと消費者数名、大体4〜6人)で行うインタビューを指し、グループダイナミックス(誰かの意見を媒介した時のある人の意見の再構築の仕方)を見るために実施されるインタビューです。つまり、グループインタビューでは、誰かの意見を聞くことにより、その意見を聞いた人が、もともとあった自身の考え方をどのように補強し、どのように変化させるかを見たいわけです。
さて、2つのインタビュー手法の特徴を踏まえた上で、再びご相談者様の「デプスインタビューとグループインタビューのどちらを実施すべきか」という質問に戻ると、もしご相談者様が調査に慣れていないのであれば、その答えはデプスインタビューです。
以下になぜグループインタビューではなくデプスインタビューなのかについてまとめてました。
これを聞くと、和を重んじる日本人こそグループインタビューに最適ではないか、そう思われるかもしれません。しかしながら、和を重んじるその日本人の国民性こそが、グループインタビューにおいては弊害になってしまいます。
では、なぜ日本人にグループインタビューが向かないのでしょうか? それは、日本人がとても恥ずかしがり屋さんだからです。
例えば他の人と意見が違った時に「それは違う!」とはっきり言えなかったり、グループ内に声の大きい人がいるとついついその人の意見に流されてしまったり、状況に合わせて意見を二転三転させてしまったり。皆さんも身に覚えがあると思いますが、その場の空気を読みすぎるあまり、ちゃんと自分の本音を話せないのです。
もちろん、仲のいい友人どうしやゲーム的に楽しいインタビューであればグループインタビューも機能するのですが、現実的にグループインタビューで友人知人ばかりを集めたり、ゲーム的に楽しいインタビューを設計するというのは、通常のインタビューとは異なるさまざまな考慮ポイントが存在するため、難易度があがります。
定性調査で商品パッケージの評価を行うとして、必ず皆さんに留意していただきたいポイントが1つあります。それは、実際にその商品が販売されるであろう状況下に限りなく近い状況で評価をする必要があるということです。
想像してみてください。今回ご相談に挙がっている消費財を購入しようという時に、グループで集まってあ〜でもないこうでもないと議論しながらどの商品を手にとるか決めるでしょうか? そういった意味でも、やはりグループインタビューではなくデプスインタビューである必要があると思います。
また、仮にデプスインタビューを行うにしても、実際に商品が販売されている状況を意識する必要があります。例えば、今回のご相談の場合だと、評価を受けるパッケージはご相談者様が満を持して消費者に提案するものなので、インタビュールームのデスクの上に置かれた商品を見た瞬間、消費者たちは「素敵なパッケージ」とおっしゃることでしょう。
しかしながら、今回ご相談に上がっている消費財は、通常であれば、競合と並べて棚に陳列され、常に消費者から相対評価を受けるカテゴリーです。もしかすると、新商品の横にその他多くの競合を並べた瞬間、せっかくの素敵なパッケージも一切目立たなくなってしまうということは、十分あり得るのです。
ですので、このような場合は、盛り棚に競合と一緒に陳列したものを消費者に見せる、そもそもインタビュールームで評価を行なっていいのか検討するなどの工夫の余地がありますね。
前章でも述べてきたように、グループインタビューを通じて消費者について深く理解するというのは、とても難しいことです。しかしその一方で、私たちがこれほどに口酸っぱく「グループインタビューで消費者を深く理解することは難しい」と言っているにもかかわらず、グループインタビューを好んで実施する企業が後を絶たないのも実情です。
恐らくその理由は、グループインタビューの方がたくさんの人から意見を聞けるからだと思います。数で満足しちゃうんですね。
しかしながら、デプスインタビューやグループインタビューを含めた定性調査の本質は、一人一人が持つ意思決定のロジックを正確に理解することにあります。グループインタビューは、確かに一度でたくさんの意見が聞けますが、その一方で、限られたインタビュー時間が複数人に分散してしまいますし、他人がいるという特殊な環境下であることからも、掘り下げて物事を聞くということが難しくなります。
繰り返しになりますが、定性調査で重要なのは、理解の深さです。それゆえに、消費者を正しく理解するには、その場の空気により右往左往する大人数の意見よりも、たった一人の本音こそがよほど価値を持つということを心得ておきましょう。
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