コラム

ブランドはどこで戦う? 市場を見つける2つのポイント

マーケのヒント
執筆
足立 理恵
公開日
2020年4月17日
更新日
2022年9月21日

「ブランドのユーザーを増やしたい! 」と考えるときであれ、「あらたに市場参入したい! 」と考えるときであれ、必ず「どこから人を取ってくるのか」を考える必要がでてきます。また、マーケティングのセオリーにならってSTPをはじめようというときでも、「どんな市場で考えるべきなのか」が最初に決めるべきことになります(ここでいう市場は、産業分類や業界分類のような市場ではなく、個々のブランドが見定めるべき市場のことです)。

「消費者の嗜好や行動が多様化している」と言われるようになって久しく、企業は消費者のさまざまな生活シーンについてブランドの可能性を考えるようになり、それと同時に、それぞれの状況で競合の可能性を考えることにもなってきました。市場が複雑化していくなかでブランドの今後の展開を考えるにあたり、自分たちのブランドが狙っていく市場をどう捉えるのか・そのときどこを競合と見るべきなのか、その意思決定もますます難しくかつ重要になってきています。

市場を決めるにあたって、どのようなことが考慮されるべきなのか、どのような情報をもとに考えることができるのか。今回はそのようなことをまとめてみようと思います。

市場を考えるにあたって

ブランドがみるべき市場は、ブランドの目的やビジネスの文脈に大きく依存します。「数値的にどれだけの目標が設定されるのか」と「消費者の頭の中で何と戦うのか」の2点で市場の選び方は大きく変わる、ということです。それそれどういうことなのか、順番にお話していきましょう。

ひとつ目、目標にあった市場を考える

 たとえば、ブランドの売上目標が(控えめに)1億円であるとして、市場規模100億円の市場を考えるとしましょう。この場合、市場でブランドの存在感はどれくらいでしょうか?シェアにするとたった1%です。おそらく、ほとんど見えませんよね…

どこを狙いに行く、どこから取ってくる…というには、1%という目標値はあまりに小さすぎて考えづらく、議論としても建設的とは言いがたいものです。もう、この場合であれば、市場全体に対して…という考え方ではなく、ニッチブランドとして突き進んで売上を作っていくので充分そうです。

目標に対してあまりに大きすぎる世界を考えて途方に暮れてしまうのであれば、その市場を細分し、市場で適切な規模感になるまで絞り込んで考える方が、結果的に扱いやすい情報になります。

一方、市場規模が小さすぎても問題です。市場内でとんでもなく大きいシェアを獲得しないといけない!という目標を宣言することになりかねません。また、あまりにも自分たちの都合のいい市場になってしまうと、そのなかで自分たちの独自性や施策を考えていく…というには使えない情報になってしまいそうです。

というわけで、ブランドの目標にあった適切な規模の市場を考えることが大事になってきます。目安としては、10〜20%までのシェアを目指す規模で市場を設定しておくと、あとあとセグメントを考えていく過程でも扱いやすくほどよい値かと思います。

ふたつ目、ブランドは消費者の頭の中で何と戦っているのか

「消費者の頭の中で何と戦うのか」は、別の言い方をすると、「消費者が費やすお金と時間を共有している相手は何か」とも言えます。

いきなり例をあげてなんですが、スーパー銭湯について考えてみましょう。

さて、スーパー銭湯は消費者にどのように思われているのでしょうか。お店によってコンセプトは様々ですので一概に言えませんが、ひとまず仮として「気軽にいけるリフレッシュの場」と思われているとしましょう(単純に「入浴施設」ではなく「リフレッシュの場」という意味付けがされているのがポイントです)。この場合、同じサービスのカテゴリである日帰り入浴施設だけが競合であるとして、カテゴリの市場だけをみていれば良いのでしょうか。もし同じ商圏に整体やリフレクソロジーのお店があったら、これらと競っている可能性はありそうでしょうか。リフレッシュの意味によっては、スポーツジムやバッティングセンターとも競っているかもしれません。

すべては、消費者の頭の中で戦っている。

近年、「モノからコトへ」という流れがあるように「消費者が何のためにブランドを利用しているのか・ブランドにたいしてどのような意味付けをしているのか」に着目したブランド構築・マーケティングが盛んになっています。「消費者はブランドをどのような存在とみなしているのか? 」「市場のニーズは? ブランドの価値は? 」という問いを頭において、日々の業務に取り組んでいらっしゃるマーケターさんも多いかと思います。

別の例として、競合のありふれた洗剤のケースについて考えてみると、モノ自体が市場で新規である必要はなく、モノの「意味」が市場の中で新規である必要があり、ここでも「意味」の観点で市場を理解していくことが必要になります(消費者理解に関心ある方は、こちらのコラム「潜在ニーズはそこら中にある。その料理の仕方こそマーケターの腕の見せ所」もぜひ! )。

このような消費者中心のマーケティングのコアとなる問いは、市場を考える上でも重要になります。ここを外して競合を見誤ってしまうと、市場にいる消費者に自分たちのブランドの強みがうまく伝わらない・響かない、といったことや、ブランドが持っている潜在的な機会を逃してしまう、なんてことも起きる可能性があるのです。

とはいえ、どこまでも広げていくと市場規模が広がりすぎてしまいますし、市場にいる消費者の幅が広がって共通項がどんどんぼやけてしまうので市場の特徴が掴みづらくなっていきます。ですので、必要以上にカテゴリを逸脱させずにどの範囲までを考えるのか、注意が必要です。このあたりは、カテゴリの知識やそのカテゴリの消費者理解をベースに、そして「ブランドとしてどうありたいか?」という意思も絡めて考えていくことになるかと思います。

ただし、この場合は先に触れた市場規模を算出するハードルが上がります。というのは、ブランドのアドホックな市場になるので、一般に存在している市場規模データを使っての算出が難しくなり、調査ベースで算出する必要が生じるからです(もちろん、ホジョセンでお手伝いしております!)。

ブランドにとって未来ある市場は、自分たちで決めるもの

つれづれとお話ししてきましたが、これだけ見ておけば決められる!かというと、実はそういうわけではありません。

実際には、会社の内部事情的に発生する制約や、ブランド自身が「ブランドらしさ」のために課している制約など、ブランドが置かれる状況に応じて様々な個別具体の制約を受けているかと思います。この制約によって、考えられる市場も影響を受けることになるのです。

一例ですが、「リニューアル」をマーケティング的に考える〜将棋連盟ウェブサイトをきっかけに」のコラム内で、日本将棋連盟がウェブサイトリニューアルの際に考えた市場はどこか、について弊社高橋が考察しています。

市場をきめるにあたっては、過度に現状の市場や消費者の認識に合わせることはありませんし、現状に縛られすぎることもないかと思います。どこを目指すのかをみずからの意思で決める段階ですので、これらのことを勘案してすすめばよい、ということです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました! 最後に、本文で紹介したコラム・関連するコラムをまとめます。お時間があればぜひ。

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