コラム

提案を通せない人が押さえるべきビジネスパーソンの思考パターン3つ

マーケのヒント
執筆
高橋 孝之
公開日
2019年8月7日
更新日
2022年9月29日

ホジョセンは、よくセグメンテーションのお仕事をさせていただきます。消費者・生活者をいくつかのパターンに単純化することで、クライアントさんの戦略や行動の指針とするものです。マーケティングではSTP戦略のSにあたる部分ですので、ご存知のかたも多いと思います。

これを同僚に当てはめてしまえ、というのが今回のコラムになります。社内で自分の提案を通すためにはどのようなアプローチを取るのが効率的なのか、プロジェクトマネジメントを円滑に進める上でどうコミュニケーションをとっていけばよいか、と考えた上で編み出した単純モデルです。

いろんな方といっしょに働く中で多少のアップデートはしましたが、基本的には10年以上使っているパターンです。僕の(元)同僚の皆様は何度も聞いた話だと思いますが、ご了承ください。また、このモデルに落ち着くまでにさまざまな方からのフィードバックをいただきました。諸先輩方、元同僚の皆様に感謝します。

WHYの人、WHATの人、HOWの人

セグメンテーションの軸として、「提案(指示)を受けたときに最初に抱く支配的な疑問」を採用しました。初見で抱く疑問に対し、適切な対応をとることでサポートしてもらいやすくなるからです。裏を返せば、初見時の疑問に対し、いくら正しかろうがその人に対して適切でない対応をとってしまうと挽回が大変だということでもあります。

「初見における支配的な疑問」で切り分けたときに表出する3つのパターンは、WHYの人、WHATの人、HOWの人、です。それぞれどういう人なのか見てみることにしましょう。

WHYの人

まずはWHYの人です。WHYの人が提案初見時に抱く典型的な疑問は、「なぜそれが正しいのか?」です。筋の通っていない提案が嫌いです。「正しいことをしたい」人だと言えるでしょう。

WHYの人は、適切な原因把握からある程度論理的に提案まで導かれていれば気分がよくなる、という傾向があります。「こいつの提案内容は筋が通っているのか」との疑念がとても強い人です。直感的に提案を信じてくれるタイプではないので、その提案に至った理由と過程をじっくりと説明する必要があります。往々にしてWHYの人は自分なりのロジックを持っているので、そのロジックと別の視点のロジックを組み立ててしまうと説得に苦労することがあるかもしれません。

WHYの人は、問題が適切に定義された上で提案がなされていれば問題解決は自明に達成できる、と過信しているケースもあります。また、論理的に正しい流れで提案がなされているからといって必ずしもその提案がベストとは限らないのですが、その流れさえ整っていれば満足してしまい、ベストを追求する姿勢は弱いかもしれません。

WHYの人は、よく「なんで?」とか「おかしくないですか?」という質問をします。この質問は、WHATの人、HOWの人にとっては否定されている、と感じる圧があるのですが、WHYの人はもっとピュアになぜそれが正しいのかを知りたいんだと理解すれば、接するのも楽になります。

WHATの人

WHATの人が提案初見時に抱く典型的な疑問は、「それは何を意味しているのか?」です。意志のない主張や、あったとしても自分の理想と違う主張はあまり好きではありません。「理想を追求したい人」と言えるでしょう。

WHATの人は、提案が意味するところの具体的なゴールが明確に腹落ちし、自分の向いている方向性と一致していれば味方になってくれる、という傾向があります。WHATの人は自分なりの理想像を持っている事が多く、そこへ向けて活動をしている人たちです。提案内容が自分たちの持つ理想像へと導いてくれるのかを、とても気にする人たちだと言えるでしょう。WHATの人が持つビジョンに対して直感的に反する提案を持っていく場合には、緻密な準備が必要になるケースが多いです。

WHATの人は、強いビジョンを持っていて、あるべき姿を追求したいという熱意にあふれています。極端な話として、論理的に多少粗相があったとしても、それによって自身の理想に近づくのであれば気にしないことすらある人たちです。

WHATの人は、よく「意味がわからん」「結局なに?」「何をしたいの?」といった質問をします。WHYの「なぜ」質問と同じく、これもWHATではない人にとっては責められていると感じるかもしれません。ですが、WHATの人はもっとピュアなのです。単にこちらの提案の意味するところがきちんと伝わっていないだけなんだと考えると、コミュニケーションも怖くなくなります。

HOWの人

最後はHOWの人です。HOWの人が提案初見時に抱く典型的な疑問は、「それをどのように実現するのか?」です。絵に描いた餅のような、耳障りだけがよい提案が大嫌いです。「目に見える変化を実現したい人」と言えるでしょう。

HOWの人は、提案を実現するプロセスが現実的で、かつ好ましいものであればサポートしてくれるという傾向があります。HOWの人は、どれだけプランニングが正しくても実行できないと意味がないしビジネスインパクトはゼロだという、ごく当たり前で大切なことをとても重要視している人たちです。HOWの人に対して提案をする際には、彼ら彼女らの環境を十分に考慮した上での提案が欠かせません。相手の特殊な事情を加味していない提案は、実現不可能だという疑念が湧いてしまうからです。

HOWの人は、同僚にいるととても心強いタイプです。とにかく実行・実現に邁進してくれる人たちです。一方で、お客さんにいると前提知識に差があるので大変です。しっかりと勉強する必要がありますね。

HOWの人は、よく「それできんの?」という質問をします。この質問は、その人にとって提案している内容を実現する方法が見えていないため賛成しづらい、という意思表示だと考えるのがハッピーに過ごすコツです。

まとめ

WHYWHATHOW
興味関心なぜその提案が正しいのか?その提案は何を意味しているのか?その提案をどのように実現するか?
信念適切に問題が把握され、論理的に導かれた提案は問題を解決するビジネスとしてあるべき姿を追求していくべきだ戦略や企画がどれだけ正しくても、実行できなければ意味がない
行動原理原因と提案に一貫性があることで、肯定的になる提案の具体的なゴールやその意味を明確に理解でき、かつそれが自身のビジョンと近ければ肯定的になる進め方、プロセスが現実的で、かつ本人にとって好ましいものであれば肯定的になる
口癖「なんで?」
「正しいの?」
「何をしたいの?」
「結局何?」
「できるの?」
「現実的ではない」

これら3つのパターンは、100-0ではありません。誰しもがそれぞれの思考を持っています。ただし、僕の観察では、ひとりひとり明確に強弱を持っているように思います。

プロジェクトのキーパーソンがどういうタイプなのか、チームメンバーはどういうタイプなのか、それぞれしっかりと理解をすれば、適切なタイミングで適切な情報に加え、欲している情報を過不足なく提供することも可能になります。

円滑なプロジェクトマネジメントのために、そして自分が正しいと考える提案を実現していくために、うまく活用していただければ幸いです! また、自分がどういう傾向にあるのかも把握しておくと、発する質問が偏ることも防げます。

ホジョセンは、提案内容が現実に実行されるための根回しやコミュニケーションも重視しています。それぞれのクライアントさんで戦略を確実に実行していくためには、多くの人からのサポートが欠かせません。3つのパターンを駆使することで、円滑なプロジェクトマネジメントを可能にし、本当に大切なことに貴重な時間を使うことができるようになります。

おまけ:セグメント間の良くある衝突について

WHYの人、WHATの人、HOWの人は、うまい具合にコラボレーションできれば、ものすごく良いパートナーになります。一方で、反目すると結構まとめ上げるのが大変です。ここでは、各セグメントがその他のセグメントに対してどういう愚痴を言う傾向があるかもまとめてみました。

WHY vs WHAT vs HOW

追記(2019/8/8 10:50)

思いの外多くの方に読んでいただき、面白く勉強になってます。皆さんの反応を拝見して、ちょっとだけ追記をさせていただこうと思いました。

①「提案」という言葉について

「提案」という言葉を使ったのですが、これは必ずしも「提案書」というオフィシャルな状況だけを想定したわけではありません。どちらかというと通常業務で頻出する大小さまざまな提案をイメージしています。提案書を提示してオフィシャルに提案する状況でも使える部分はあるかなと思いますが…、当てはまらないことも多々あるかと思います。混乱させてしまった方にはスイマセン。

「通常業務で頻出する大小さまざまな提案」には、きちんとした資料もなく口頭でのみなされるケースも多々あります。そういう状況でどのように影響力を発揮するかという観点で書きました。あんまりイケてない例ですが、こんな感じのイメージです。

提案「消しゴム買っていいですか?」
WHY「なんで消しゴムが必要なんだろう?」
WHAT「どんな消しゴム買うって言ってんだろう?」
HOW「どこで買うのかな? アスクルかな、コンビニかな? 消しゴムのために外出するのはあんまりだな」

②「初見」について

言葉足らずで混乱させてしまったようで恐縮なのですが、上記は「初見」で考えています。議論をしていくうちに視点が変化することは当然のことなので、敢えて「初見」で抱く支配的な疑問としています。

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