コラム
お陰様で昨年発売になった新商品が、大ヒットしました。
家庭用調理器具メーカー
あまり予算がなかったこともあり、当初はSNSでのみ広告宣伝を行っていたのですが、いわゆるイノベーターや、アーリーアダプターと呼ばれる方たちの間で話題となり拡散したことで、現在に至ります。
今後、当該商品についてもっとたくさんの方に使っていただきたいと考えているのですが、イノベーターや、アーリーアダプター以外の層(アーリーマジョリティやレイトマジョリティ、ラガード)にPRするにあたりこれまでと違ったマーケティングを展開する必要はあるのでしょうか?
様々な取り組みをしていて全体のPV数は上がっているが、どの取り組みが結果に影響しているのかがわからない。今後の方針をたてるためのポイントを知りたい、とのことですね。
さて、ご相談では当該商品についてもっとたくさんの方に使っていただきたいとのことでしたが、ここでいう「たくさん」とは一体どのくらいの規模を指しているのでしょうか?
もし、莫大な数でないのであれば、現時点ではアーリーマジョリティやレイトマジョリティ、ラガード(以下後進層)といった比較的後進の層を狙いに行くよりも、いま積極的に商品を購入してくれているイノベーターやアーリーアダプター層の取りこぼしを拾いに行くほうが賢明であると言えます。
もしかすると、このように申し上げると「イノベーターやアーリーアダプターってごく1部の限られた人だけじゃないか」と思われるかもしれませんが、いわゆるイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる層は、合計すると消費者全体の15%を占めるといわれており、日本の総人口が1億3000万近くであることを思うと、かなりの数になりますよね。
ご相談者様の新商品が、現状市場のどのくらいのシェアをとっているのかは分かりませんが、もっと今のターゲット層と積極的にコミュニケーションを図れる手段はないのか、もう一度見直してみる価値は十分にあると思います。
また、当該商品のターゲットを、イノベーターやアーリーアダプター層から後進層に移行する最大のリスクは、2つの層の間にある嗜好の違いにあります。
ご相談によると、新商品がイノベーターや、アーリーアダプターと呼ばれるトレンドに敏感な層に受けたということなので、当該商品はきっと最先端で刺激的、おもしろくてユニークな素敵な商品だったに違いありません。
しかし、今ご相談者様が取り込もうとしている後進層には、「新しいものが好き」「人と同じものを使いたくない」といったイノベーターや、アーリーアダプターとは対照的に、保守的な嗜好の持ち主が多く、「最先端」「ユニーク」といった当該商品にとって魅力ともいえる部分を、「奇抜すぎる」「誰も持っていない」といったマイナスの要素として捉えられてしまう可能性があります。
それでも、当該商品におけるマーケティング活動を、少々無理をしてでも後進層に合わせて行うということであれば、せっかくの商品の魅力を消してしまうことにも繋がりかねないので、かなり慎重に行う必要があるでしょう。
また、後進層に商品を認知させるにはSNSなどソーシャルメディアよりも、TVCMなどのマスメディアの方が有力であるため、経済的に余力があるのかどうかも検討しなくてはなりません。ご相談では、そもそもあまり予算がなかったためSNSでの広告宣伝に特化したとのことだったので、後進層に対するマーケティングを行うことが現実的なのか、いま一度考え直してみてください。
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