コラム

その改善策本当に大丈夫!?2種類のカニバリを見極める方法。

Q&A
執筆
堀井 里奈
公開日
2017年7月5日
更新日
2022年9月21日

商品をニューリリースしたタイミングから、他の商品の売上が落ち始めました。どうやらカニバリゼーションが起こっているのではないかと見ているのですが、カニバリが起こっているかどうかを確認するにはどうすればいいでしょうか。

メーカー

ブランド拡張にともなうカニバリについて、商品をたくさん持つメーカーや複数ブランドを持つ企業の方であれば、特に意識する機会が多いことかと思います。

カニバリゼーション(cannibalization、カニバリとも)とは、直訳すると「共食い」という意味であり、マーケティングにおいては、自社商品の売上げがそれと類似する自社の別の商品の売上げを奪ってしまう現象のことを指します。もしカニバリの可能性があるならば、現状をきちんと把握し、状況に適した対応をする必要があります。

さて、今回ご相談いただいたカニバりが起こっているか確認についてですが、まずは、カニバリには2つのパターンがあることを理解しましょう。

既存の商品をブランドA、ニューリリースの商品をブランドBとすると

1. 選択のカニバリゼーション

消費者は2つの商品を選ぶことができ、ブランドAをもともと買っていた人がブランドBにシフトした場合。

2. 棚のカニバリゼーション

もともとブランドAがお店の棚に並んでいたが、ブランドBが出たタイミングでAがお店の棚から外れてしまった場合。

まず、選択のカニバリを確かめる方法は、パネルデータやPOSデータでの確認が有効です。マクロミルのQPRやインテージのSCIのパネルデータや、POSデータであるSRI等で、ブランドBの購入者が以前どのブランドを購入していたのか、またはフェアシェア(ブランドBをのぞいたシェア)を見ていきます。

フェアシェアで見るカニバリ

Bがニューリリースした当初のシェアが以下の割合だったとします。

ブランドA 10% (メーカーXの商品)
ブランドB 20% (メーカーXの商品)
ブランドC 30% (メーカーYの商品)
ブランドD 40% (メーカーZの商品)

ここからブランドBの売り上げが伸び、シェアが25%に増えたと同時に、ブランドAの売上が下ったとします。

それぞれのブランドから同じ割合でブランドBにシフトしているであれば、ブランドBの伸びの5%の内、ブランドAからは \((10/(100—20)) \times 5 \)%が移行しているはずです。その値と比べ、実際の移行率が大きければ、他のブランドよりもブランドAからの移行が強いといえるのでカニバっていると言えます。この考え方を、フェアシェアベースのカニバリゼーション評価といいます。ブランドBが伸びた分はブランドBを除いた各商品のシェアに応じて減少するはずだという仮定に基づき、それよりも大きい現象が確認されれば過剰なカニバリゼーションを起こしている、それよりも小さければカニバリゼーションを上手にマネージできている、と考えます。

もし、QPRかSCI等のデータがない場合は、ブランドBを買うようになった人に話を聞き、定量・定性の両面で調査をしていく方法がよいかと思います。ただし、パネルデータでの確認よりは精度は低くなってしまうことを留意しておきましょう。

一方、棚のカニバリゼーションは、インテージのSRIの配荷率のデータをみて、ブランドBのニューリリースやバージョンアップのタイミングでAの配荷率が下がっていないかを確認します。下がっている場合はカニバリゼーションが起こっているとみなすことができます。

SRIデータが無ければ営業に確認、若しくは今まで商品が売られていたお店の棚にまだ商品が置いてあるか、定性的な確認をする必要があります。

以上の方法で実際にカニバリが起こってしまっていた場合、選択のカニバリにおいてはブランドAとBのユーザーを切り分ける対応が必要になりますし、棚のカニバリはブランドAとBが消費者的にカニバっていないのであれば、小売店にブランドAからBへスイッチ可能と思われない様に、コミュニケーションをとることや、卸値の交渉をしていくなどの工夫が必要になってくるかもしれません。

ホジョセンメルマガに登録しませんか?

ホジョセンメルマガは、マーケティングのご質問にお答えしたり、マーケティングコラムをお届けしたり、と毎週たったの5分で読めるマーケティング情報を、毎週水曜日にお送りしています。

ホジョセンメルマガに登録

ブランドポートフォリオ・マネジメントに関連するコラム