コラム
先日、弊社の様々な部署に所属するメンバーを集めて新商品開発のワークショップを開催しました。せっかくの機会だったので、新しいアイディアに結びつくよう、こだわってプログラムを作成したのですが、初対面の面子が多かったからなのか、最初から最後まで全くと言っていいほど盛り上がりませんでした。一体どこに問題があったのでしょうか?
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さてみなさん、「最悪のワークショップの光景を思い浮かべてください」と言われるとどのような光景をイメージしますか?
おそらくですが、多くの人が「し~ん・・・・」と静まりかえり、なんだか気まずい様子を想像するのではないでしょうか?
今回のご相談では、せっかく開催したワークショップが、最初から最後まで全くと言っていいほど盛り上がらなかったとのことですが、ご相談者様もさぞ凍りついたことかと思います。
ワークショップにおいて、「し~ん」と盛り上がらない原因は色々考えられますが、今回のように「最初から最後まで」というところに着目すると、こだわって作ったというプログラムの内容よりも、ワークショップの導入部分、つまりイントロダクションとアイスブレイクの部分に問題があったのではないでしょうか?
なぜなら、初対面の人たちが集まってワークショップを開催する場合、参加者が1番緊張して居心地が悪いと感じてしまうのが、会場に集まった時やワークショップの開始直後だからです。開始から早い段階で緊張を解き、参加者どうし打ち解け合うような施策をちゃんととっていないと、そこからズルズルとなんだか気まずい雰囲気を引きずってしまうわけですね。
しかし、逆に言うと、ワークショップの導入部分、つまり、つかみの部分さえしっかり設計しておけば、なかなか場が温まらず議論が全く盛り上がらないなど、最悪の事態を避けることができます。
そこで今回は、ワークショップの導入部分において、素早く参加者の緊張感を解き、かつやる気にさせるための工夫について以下にまとめてみました。
イントロダクションでは、ファシリテーターの挨拶や自己紹介、当日のタイムテーブルについての説明が行われます。ここで重要なのは、これらの基本情報に加え、なぜワークショップを開催するのか、ワークショップを開催することで何を目指すのかなどについても、参加者に明確に伝えるということです。目的とゴールを意識することで、参加者に当事者意識が芽生え、その後の議論についても積極的に参加する意欲が湧きます。
また、ファシリテーターの人は、こうしたの事柄を伝える時に、ただ一方的に原稿を読み上げるのではなく、自然な会話を振りながら、参加者一人ひとりの表情を見るなど、伝え方に一工夫凝らすとさらにいいと言えます。
なぜなら、そうすることで、参加者が本当にワークッショップの趣旨を理解しているのかどうか確認できるし、参加者からしてみても、親身な感じがして心を開きやすいですよね。
最初の伝え方の工夫ひとつで、伝わり方も随分違ってきて、結果、その後に続く議論の雰囲気も大きく異なってくるわけです。
新しいアイディアやその種を創造するために、あえて違う属性の参加者を募ることも多いワークショップ。そのため、今回のご相談のようにグループ全員が初対面ということも珍しくありません。
多くのワークショップでは、このような初対面の参加者どうしの緊張感を解きほぐすため、様々なアイスブレイクを取りいれるわけですが、アイスブレイクで気をつけなくてはいけないのは、ついつい参加者どうし仲良くなってもらおうと必死になりすぎて、やり過ぎやブツ切れになってしまうことです。
例えば、いくらみんなの緊張感を解きほぐすためとはいえ、いきなり「参加者みんなで輪になってフォークダンスを踊ってください」とか言われると、正直戸惑いしか感じないですよね。しかも、踊った後すぐにダンスとは何ら関係のない議論が始まるとなるとさらに困惑です。
もちろん、ワークショップに熟練している方々であれば、創意工夫を凝らしたアイスブレイクでも上手くいくかと思うのですが、「今回初めてワークショップをします」「参加者全員一般応募で当日の様子が読めない」といった場合には、素直にアイスブレイクの定番である「自己紹介」を採用することをおすすめします。
ただ、「はじめまして。株式会社○○××部の△△と申します。本日も一日宜しくお願いします。」と言った平凡な自己紹介では、いかにも参加者どうし打ち解合うことができなさそうですよね。そこで、定番の自己紹介に、主催者側が一捻り加えることで、誰の自己紹介であっても、ある程度、グレードアップさせることができます。
ポイントは、参加者に予め自己紹介シートを作成してもらうということです。自己紹介シートには、自分の所属や日頃の活用内容の他、ワークショップへの参加動機や、お題に沿ったエピソードを書き込んでもらいましょう。ちなみに、お題は基本的には自由ですが、やり過ぎやブツ切れにならないためにも、各々の個性が出つつも、テーマに関連するものが望ましいと思われます。例えば、新しいお菓子の開発に関するワークショップであるのであれば、おすすめスイーツについてや、日頃お菓子を食べるシチュエーションについて話してもらうというのはどうでしょうか?
さて、自己紹介シートの記入が済んだら、今度は実際に自己紹介をする場面についてです。ここで大切なのは、きっちりタイムキープすることです。お題の内容などにもよりますが、1人あたりの持ち時間は「少し短いのでは?」くらいがベストかと思います。仮に、実際時間が足りなくて、自分を紹介しきれない人が出てきたとしても、それはそれで笑いや照れなどにつながるので結果オーライです。
あと、ちょっとだけ高等テクニックになるのですが、予め各テーブルに自己紹介シートやネームプレート、あと記入用のペンを人数分用意した上で、テーブルに最初に座った人にだけ、自己紹介シートやネームプレートを記入する旨を伝えるという方法があります。そうすることで、初対面どうしでも、会話の糸口になりますよね。
繰り返しになりますが、ワークショップでは、序盤の雰囲気が、その後のワークに大きく影響します。
参加者のハートは、ワークショップのつかみでがっちりつかんで、ぜひ活気のあるワークショップにしてください。
※今回の回答は、東京大学大学院情報学環 安西勇樹 特任助教の著書「私たちのデザイン5 協創の場のデザイン ーワークショップで企業と地域が変わる」などを参考に作成しています。
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