モデレーター

Risa Shimodoi

「モデレーター」

この職業と私が初めて出会ったのは、今から約 5 年前。外資系メーカーのアシスタントとして働いていた私は、ある日突然人手が足りないからと、「やってみる?」という上司からの一声でお宅訪問インタビューのモデレーターをやることに。上司から約 10 分間のインタビューのインストラクションを受け、訳も分からないままにモデレーターデビュー。

そんなゆる〜い感じで始まったモデレーター生活でしたが、いつの間にかインタビューのとりこになり、今では年間約 100 のプロジェクト、人数にして年間約 570 名の方にインタビューするまで至っています。今でも新しいカテゴリーに挑戦しながらまだまだ勉強中です。

私はマーケティングリサーチのインタビューの何に魅了されたのか。

それは、まさに消費者の“インサイトを知る”ということでした。インサイトを知るということは、つまり相手を理解するということ。消費者の生活、嗜好や習慣を知ることはもちろん、そのさらに奥にある価値観や考え方、モチベーションなどのより人間のコアな部分を理解するというプロセスは私にとってとても興味深かったのです。

では、その“インサイトを知る”ことはビジネスにとってはどんな意味をもつのでしょうか。

私は消費者の“インサイトを知る”ことは、全ての戦略の土台のようなものだと考えています。

根拠はないけれど天才的なひらめきで成功した例もあるでしょうがまれでしょうし、それを何年も続けることはさらに難しくなるでしょう。

コンスタントに買ってもらえる商品やサービスを作るには、やはり消費者理解が不可欠。

ものがあふれていて、選択肢は数えきれないほどあるこの日本では、消費者の変化は驚くほど早いものだと実際にインタビューをしていて肌で感じます。

柔軟剤を例にとってみても、Downy の登場で数年前まで全く一般的ではなかった香りをつけるという事が今では当たり前になり、2012 年には衣類の香りづけ専用の製品が日経トレンディのヒット商品に選ばれるまでに。この流れによって消費者にとって”いい香り”は最低限の必要条件となり、もうすでに香りがいいだけでは、商品は売れなくなってきているようです。消費者の柔軟剤に対する常識は、このたった数年間の間で大きく変化したと言えるでしょう。

1 度はヒットしても、定期的に消費者を知る機会をもたなければ、ほんの数年で置いて行かれてしまう。好調なブランドというのは、消費者をしっかり理解する機会を多く持っているように思います。

土がなければ花は育たないように、土台のないところにいくら戦略を打ち出したとしてもブランドとして育っていきません。

しっかりと消費者のインサイトを理解し、その土台の上で戦略をたてていく。土台がしっかりとしていればしているほど、その上で育つブランドは大きく花開く可能性が高くなるのではないか思います。

消費者のインサイトは変化し続けるということは、ビジネスにとって難しさでもあり、醍醐味でもあります。偶然始まったモデレーター生活も今年で5年目になりますが、飽きっぽい私が今でも楽しみながらこの仕事に取り組めているのは、インサイトには永久に使える1つの決まった答えはないからです。何百人何千人の消費者と話していても、消費者のことは理解していると思っていても、時々インタビューで出てきた結論や消費者の変化に驚かされることがあります。

「消費者はこうだ」と決して決めつけることなく、インタビューで出てくる声と素直に向き合うこと。これは、今後モデレーターとしてどれだけ経験が増えても、自分のなかで大切にしていきたいモデレーターとしての姿勢です。