コラム

ワークショップお題設計におけるホップステップ

Q&A
執筆
金本 奈絵
公開日
2017年8月4日
更新日
2022年9月30日

子ども用雑貨を取り扱うメーカーに勤務しています。先日社内の様々な部署のメンバーを集めて、新商品開発に向けてのワークショップを開催しました。今回は、今までにない新しいアイディアを募りたかったので、あえて自由に発想しやすいようにと「これまでにないおもちゃを考える」という抽象的なお題を参加者に投げかけたのですが、残念なことに、あまりいいアイディアが出てこず、お題がまずかったのか、アイディアを出すのに手こずる人も何人か出てきました。参加者から斬新なアイディアを引き出すには、参加者にどのようなお題を投げかければよかったのでしょうか?

子ども用雑貨メーカー

参加者どうしのチームワーク、ファシリテーターの資質などももちろんそうなのですが、ワークショップの出来を大きく左右するものの1つとして、「お題」が挙げられます。

ワークショップのお題を設計する上で、主催者が意識しなくてはいけないことは、「ワークショップで考えるべきこと」イコール「参加者に取り組んでもらうお題」ではないということです。

例えば、今回のご相談のように、たとえそれが最終到達地点だったとしても「これまでにない新しいタイプのおもちゃを考える」と、ど直球のお題を出したところで、ワークショップの参加者から上手く新しいアイディアを引き出すことはできません。なぜなら、このような抽象的で比較的自由度の高いお題では、参加者の思考の焦点も抽象的なものとなってしまい、ひどい時には、考える糸口が見つけられず、考えるという行為そのものがフリーズしてしまうからです。

そこで、こうした自体を回避するためには、主催者はワークショップのテーマから大きく外れない程度にお題に一捻り加える必要があります。

ちなみに、ほんの一例ではありますが、お題の「一捻り」として使いやすい様式を以下にまとめました。

1. 得点をつけて評価する

曖昧な価値に対して具体的に点数をつけていきます。そうすることで、議論を具体化したり、経験を振り返ることができます。

ex:「絵本、ミニカー、ぬいぐるみ、パズルについてそれぞれの効用を★で評価してください。」

2.グラフ化して目に見えるようにする。

曖昧な価値について時系列のグラフに表します。そうすることで、これまでの経験を整理することができたり、これまで気づかなかった法則を見つけることができます。

ex:「年代別に流行ったおもちゃを書き出してみよう」
「ある人があるおもちゃについて知ってから購入するまでの行動についてグラフを作成しましょう」

3. 架空に条件を設定する

「もし○○だったら・・・ 」と言った具合に架空の状況を想定します。そうすることで、固定概念とは違う視点から物事の思考ができるので、アイディアの創発につながります。

ex:「もしのび太くんが大人だったらドラえもんはどんな不思議道具を出しますか」

4. 逆転の発想をする

あえて固定概念とは真逆の方向性で考えます。そうすることで、固定概念とは違う視点から物事の思考ができるので、アイディアの創発につながります

ex:「子どもを泣かせるおもちゃとは」

5. 当たり前のことを深く掘り下げる

当たり前すぎてあまり意識していないことを、「そもそも◯◯とは・・・」とあえて深く考えてみます。そうすることで、前提を整理することができ、そこから固定概念とは違う視点から物事の思考を行うことができます。

ex:「そもそもおもちゃってどんなときに必要とされる?」

実際の ワークショップでは、核心に迫る前に、これらの中から2〜3つのお題を先にこなすことで、これから飛躍させていくべき思考の土台を固めます。また、これらのお題を設計する過程では、①話したくなるテーマを扱うこと②問いの組み合わせを工夫することの2点に留意する必要があります。そうすることで、ワークが直接的なグループインタビューではなく、商品ニーズ の背後にある欲求や価値観が可視化されるような有意義なものになります。

ワークショップが実施される時、多くの場合において、既存のモノやことにブレイクスルーを起こすような、新しいアイディアの創出が目的とされています。

しかしながら、高くジャンプするには、助走やジャンプ台が必要なように、既存の思考を大きく飛躍させるには、ホップ・ステップの助走が必要になります。

さて、今回は、ワークショップにおけるお題設計の工夫について言及させていただきましたがいかがでしたでしょうか。

最後に、ワークショップが上手くいかなかった時、「思ったより参加者からいいアイディアが出なかった」と、どうしてもその原因を参加者に委ねがちです。しかしながら、ワークショップで新しいアイディアを創出するのは、参加者であり、主催者も含めたワークショップに携わるもの全員なのだということをお忘れなきようよろしくお願いいたします。

※今回の回答は、東京大学大学院情報学環 安斎勇樹 特任助教の著書「私たちのデザイン5 協創の場のデザイン ーワークショップで企業と地域が変わる」などを参考に作成しています。

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