コラム
少し前の話になりますが、お正月休みに実家に帰った際にぼーっとテレビを見ていると「徹子の部屋」総集編が放送されていました。「徹子の部屋」といえば、言わずと知れた黒柳徹子さんが有名人をインタビューする長寿番組。職業柄、インタビュー番組などは勉強のために注意して見るようにしているのですが、私のなかで黒柳さんはインタビュアーとしては”別格”の存在だったので、「徹子の部屋」はあまり意識して見たことはありませんでした。というのも、バラエティー番組などで「徹子の部屋」パロディーを見たりしていた結果・・・黒柳さんのインタビューは相手の話を引き出すというよりは彼女の強いキャラクターで引っ張っていくというイメージがあり、彼女の個性が番組の人気の理由だと思っていたからです。
しかし、そのお正月の総集編を見てそのイメージは一変しました。
総集編では「徹子の部屋」の初期の頃の映像を振り返っていました。出演されていたのは昭和の俳優さんなどで私の知らない方も多かったのですが、そのインタビューを見ただけで、その人がどんなことに長けた方なのか、その人の人となりみたいなものが伝わってくるのです。
モデレーターという職業では、インタビュー力とビジネスに対する理解力のどちらもが必要になってきます。インタビュー力だけについて考えると、私の思う良いインタビュアーとは相手の個性やユニークなところを引き出すことができる人です。その個性も表面的な部分だけではなく、その人の考え方だったり、信念や価値観、行動の動機だったり普段は表面に現れてこない、さらには本人さえ気づいていない部分を引き出せるのが良いインタビュアーではないででしょうか。そのためにはただ用意された質問を読むだけでは、絶対に引き出せません。
会話のなかで相手の個性が垣間見える発言を的確に拾って会話を広げることで、その人の個性に迫っていく。黒柳さんのインタビューでは、会話の過程で相手の個性やユニークなところが引き立っていて、見ている側もきっとこういう人なんだろうなーと想像力をかき立てられ、見ていて全く飽きませんでした。
番組内の黒柳さんを観察していて、すばらしいインタビュアーだな〜と感銘を受けたポイントをいくつか紹介します。
話を聞くのが楽しくて仕方ないという感じが伝わってきて、それがきっと相手にも伝わり全体に良い空気感を作り上げていました。あれだけ自分の話を楽しそうに聞いてもらえて、嫌な気持ちがする人はいないはず。
そして、黒柳さん自身の感情表現がとても豊か。笑うときは思いっきり笑い、悲しい話のときは一緒に泣いたりする。感情を共有することで相手ももっと話したくなるのだと思います。
黒柳さんを観察していると、相手が話しているときには無言で頷いていて、熱心に聞いていることが言葉を発していなくても伝わってきます。そして、相手の言葉が途切れたところで的確な相槌を入れる。それも一定の決まった相槌ではなく、相手の言葉を繰り返したり、同調したり、相槌を効果的に使って会話を深めることで、さらに興味深い話を相手から引き出していました。
黒柳さんの質問自体は、ほとんど一言くらいでとても簡潔。自然な会話をしているような雰囲気で、相手によりたくさん話してもらえるような流れを作っていました。
ドキッとする質問も表情を変えず投げかける技は圧巻。全くためらいがないので、普通の質問をしているように聞こえてしまうほど。相手が大御所の俳優さんならなおさら、なかなかできない高度な技です。
高倉健さんがゲストの時、長い沈黙が続く場面が何度かあったのですが、黒柳さんは全く動じてない様子。そこで焦ってたたみかけず、答えを根気よく待つ事で最終的に高倉健さんの言葉が引き立ち、強い印象を残しました。このときのやり取りはかなりしびれました。
黒柳さんがこれらを意識しながら会話をされているかどうかは定かではありませんが、技術的にもすばらしく、そしてとても魅力的な聞き手でした。「徹子の部屋」が長く続く理由はきっと、黒柳さんの人間的魅力はもちろん、彼女の相手の魅力を引き出す力によるものなんだと実感した総集編でした。
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