vol.1 売上予測の「泥くささ」と、その意義を語る

メンバー
小田切巴
インタビュー時期
2020年11月
自己紹介
外資系マーケティングサービス企業にて売上予測を中心に多くのクライアントへサービスを提供。その後BtoC事業会社を経て外資系マーケティングサービス企業に復帰、売上予測のスペシャリストとして活躍。ホジョセンに入社後は、定量調査やモデリングを中心に活躍。お酒がとても好き。カリフォルニア州立大学フレズノ校数理学部心理学科卒。

補正によって正確な予測にしていくプロセスが、売上予測の肝

小田切巴

外資系マーケティングサービス企業にて売上予測のスペシャリストとして活躍した経験を活かしつつ、ホジョセンでは多岐にわたる領域へと活動の場を広げるアナリスト小田切。実直で丁寧な仕事ぶりで少数精鋭を掲げるホジョセンのパフォーマンスを支える彼女に、売上予測について語ってもらいました。

売上予測の課題と「泥くささ」

これまでのキャリアについて教えてください。

売上予測に関していうと、前職ではプロダクトとして売上予測のパッケージを売る側にいましたので、「社内でどのように活用していくか」ということよりは、「いかに正しい予測を出せるか」ということを常に考えていました。ホジョセンでは売上予測以外の仕事も増えましたが、モデルの正確さだけでなく、クライアントの商品カテゴリーや持ち合わせているデータの量や質、現場での利用のされ方なども想定した、より柔軟なモデルの構築を心がけています。

売上予測の現場で、何か課題を感じたことはありますか?

売上予測に携わる中で一番はじめに衝撃を受けたのは、「消費者の意見をあてにしすぎてはいけない」ということです。

売上予測をする上では、必ず購入意向や購入頻度をきくわけですよね。このとき、例えば消費者の購入意向が40%であったとして、そのまま実際に40%の購入が発生すると考えてはいけません。まず、調査においては認知や配荷を100%として考えているため、これらを現実に照らし合わせてダウンアジャストしていくことが手続き上必須となります。さらに、購入意向は、国や文化によってその回答の傾向が変化します。例えば、ブラジルのようなラテン文化の国では、回答のオーバークレームが起こりやすく、「購入意向が90%」というとんでもない結果も平然と起こるのですが、日本では比較的低い値になる傾向があります。このように、調査で示された購入意向は、そのまま現実の行動に即した真の事実としてみてはならない数値だといえます。

また、購入頻度も、それだけではあまり信用できるものではありません。一般的に購入意向を尋ねるときには「この商品を1年間で何回買うと思いますか」といった、一見答えることが難しそうな問い方をするわけですが、これは商品の属するカテゴリによって回答にズレが生じることがあります。これは私の経験則ですが、トイレットペーパーのような頻繁に購入される消費財では、実態以上の頻度を答えるオーバークレームが起こりやすい一方で、頻度の少ないカテゴリでは、アンダークレームが起こりやすくなります。

このように、消費者のいっていることをそのままの数値でモデルに組み込んでしまうと、事実とは全く異なる結果になってしまうわけです。だからこそ、そこをいかに補正し、正確な予測にしていくかということが、売上予測の肝となります。具体的には、あるカテゴリにおける購入意向や購入頻度と実際の購入のデータから、そのズレのパターンを見出していく。あるいはそのようなデータを自社で持ち合わせていない場合は、「ダブルジョパディの法則」などの市場法則やパネルデータなどを用いて、ベンチマークとなる別のブランドについて、購入意向・購入頻度と実際の売上とのズレをみて、それを自ブランドにおける予測のモデルと比較することで、どこにどの程度補正が必要なのかを割り出していく、といったことが求められるのです。

さらに消費者の意見を反映した数値以外にも、投下する広告費用や、店舗への配荷など事前に想定されるマーケティングプランの精度によっても予測の正確さは変わってきます。事前に顧客がどの程度精度の高いマーケティングプランが作成できるのか、その緻密さによって、モデルの作り込みも大きく左右されるため、状況に応じた検討が求められます。こうした途方もない作業が、より精緻な売上予測をするためには必要となります。私はこの正確さを追求するプロセスにやりがいを感じるのですが、こうして見ると、売上予測って、思ったより泥くさい仕事だよなあと思いますね。

売上予測はあくまでツールである

様々な補正を繰り返して出てきた売上予測は、どのように用いるべきなのでしょうか。

売上予測の応用の仕方については、その企業やブランドの目的によるとしかいえないですね。

新商品の売上予測の場合、現状のコンセプトでGoするか否かの判断に用いることもあれば、市場に出すことはもうすでに確定していて、その中でどれくらい売れそうなのかを報告するために用いられることもあります。また、在庫管理に関する問題を防ぐために、年間ではなくマンスリーやウィークリー単位で売上予測を用いるケースや、これはコロナ禍のような不確実な状況では特にあり得ることだと思いますが、シナリオごとに条件を変えた売上予測をするケースもあるでしょう。

つまり、売上予測はあくまで「ツール」であり、その使い方は予測によって何をしたいのかという目的に依存することになります。また、それぞれの用途によって求められる売上予測の精密さの度合いも変わってくるため、正確な売上予測をすること自体が目的となってしまうことは、避けなければならないと思います。

適切な意思決定を支える横断的な指標へ

最後に、売上予測の意義とは何でしょうか。

売上予測の最大のメリットは、「売上の幅がわかる」ということです。「どれだけ売れそうか」ということを精緻にみることで、在庫を緻密に管理したり、予測された認知カーブを元にメディアミックスを見直すことができるなど、ブランドの売上を最大化するための示唆を与えるツールとして、売上予測は非常に大きな力を持っています。テレビCMのメディアプランを例として挙げれば、GRPを考える上で、はじめに一気に広告を投下するのか、それともフラットに流すのかによって、認知の上がり方は変わってきますよね。ここで、売上予測における認知のカーブを見ることによって、もちろん配荷などを考慮する必要はありますが、認知の立ち上がりを早くするためにGRPのパターンを変えるといった、売上を最大化するためのメディアプランの最適化が可能となるわけです。

そして、この売上予測というツールは、主にメディアを管理するマーケティング部門に限らず、配荷をコントロールする営業部、収支を管理するファイナンス部、在庫管理に伴って商品を作る製造部など、様々な部署からのインプットによって作られ、彼らのアクションや意思決定を支える横断的な指標となります。売上予測は泥くさい仕事であるけれども、目的に応じて精緻なモデルを作っていくことで、企業全体を正しい方向へと導くための、大きな意義のあるものになると思っています。

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