ミュージアム活性化実行委員会
価値創造プロジェクト

クライアント
ミュージアム活性化実行委員会
施策
価値創造プロジェクト
ご利用サービス
実施時期
2019年2月

実際にお客様の声を聞き、統計解析などを通して、次の施策へとつながる意味のある情報を得ることができたという点において、とても有意義なプロジェクトでした。

ミュージアム活性化実行委員会 
船越 幹央様
釋 知恵子様

大阪市の博物館・美術館と関係団体が連携し、ミュージアムの魅力的な活動を通して、地域の活性化、魅力アップと発信につなげ、市民の文化・教養の向上をはかるとともに、大阪への訪問者を増やして都市としてのにぎわいを創出することを目的として設立された実行委員会。大阪市の5つの博物館(大阪歴史博物館・大阪市立自然史博物館・大阪市立美術館・大阪市立東洋陶磁美術館・大阪市立科学館)の常設展の新規利用者の開拓、観覧者の満足度向上、リピート率の向上により、観覧者数を増やすため、潜在的利用者を含めた博物館の利用実態やニーズ等を調査・分析し、常設展の魅力向上の新たな指針を得ることを目的とした。

施策へとつながる意味のある情報を得ることができた

常設展の魅力向上のための調査研究・提言、というお仕事でした。

釋さん来館者向けのアンケートなど、調査を自分たちですることもあるのですが、今回のように、専門の方法論を持つ方と一緒にするのははじめてでした。短い期間でしたが、密度の濃い経験をさせていただきました。

船越さん確かに、私たちに限らず行政では紙でのアンケート調査をよくするのですが、今回は、調査・分析、どちらの手法もやったことのないものでした。これまでは、例えば何パーセントの人がどう答えたというような、ただ回答を集計しただけの結果しか得ることができなかったのですが、本プロジェクトでは、実際にお客様の声を聞いたり、ベイジアンネットワークを用いた統計解析などを通して、次の施策へとつながる意味のある情報を得ることができたという点において、とても有意義だったと思います。

そう思っていただけると大変嬉しいです。しかし、今回のプロジェクトでは、実際には博物館のみなさんには、調査協力以外のこともたくさんしていただきました。大変ではなかったですか。

釋さん職員自身がそれぞれの博物館や美術館に対して何を魅力に感じているかというインタビューや、一般市民の方への定性調査、その後ブランドのビジョンを策定する職員参加のワークショップ、そして最後に仮説を確認するための大規模なアンケート。私たちが実現したいことを実現するためのヒントを得るのにこんな方法があるんだなぁと驚き、大変さよりも、楽しく参加できました

学芸員の研究に似ている気がした

一連の流れの中で、特に印象に残っていることや新しい発見はありましたか。

釋さんやはり一般の方へのデプスインタビューです。これまでも、博物館の友の会(ホジョセン註:各館の有料会員から構成される。入館料の割引や会員向き特別イベントへの参加などの特典を受けることができる)の方やリピーターの方など、それぞれの施設と繋がりが深い人に関しては接点があり、どのように博物館や美術館を楽しんでくれているのかイメージできていました。しかしながら、インタビューをしてみると、ふらっと訪れる人や普段学芸員と関わりがない人の中にも、1回目はさらっと、2回目は気になったものをじっくり見るなど、ちゃんと展示を楽しむ自分のスタイルを確立し、こだわりを持って見学をしている人がいることにはびっくりしました。

(アプローチが)自分の研究にどこかしら似ていると感じた

船越さん私もデプスインタビューが印象的でした。というのも、私は今、近代の庶民について、普段の暮らしの中で何を思い、どこに喜怒哀楽があるのかについて研究しているのですが、その研究に似ているような気がしました。アンケートの抽象的な回答ではなく実際の来館者の声がわかったというのはすごく良かったです。

アンケートは数字でまとめられてしまうことがほとんどです。そのため、なぜそう言っているのか、裏にどんな感情やロジックが潜んでいるのか分からず結果が腹落ちしにくいことがあります。だからこそ、ホジョセンでは生活者のインタビューを極力実施するようにしていますし、インタビューがあるからこそより正しく調査結果を読み取ることができると考えています。そう言った点において、ホジョセンとそれぞれの分野についてアカデミックに追求する学芸員の方たちとは、領域は違えど求めるものに対するアプローチの仕方は似てるんじゃないかなと思います。

その人が育ってきた環境や背景から理解する

船越さん例えば博物館や美術館に行くという行動が、現時点においては音楽鑑賞など類似の文化活動やその人が育ってきた環境や背景に密接に影響しているといった、普段何となくそうかなと感じていたことを、今回の定量調査できっちり数字として確認できたのは追求するという意味では良かったように感じています。

釋さん私の場合は、何となく感じていたことが改めてインタビューや数字、グラフで提示されて少しショックでした。美術館・博物館を利用する人の多くがある特定の層に偏っているという事実。これまでの取り組みに何が足りていなかったのか、今後努力すべき方向性が明らかになった気がします。

船越さん最近、位置情報データを活用して博物館利用者の移動経路を分析するという試みも行われています。その分析結果をマーケティングに生かすという意図は理解できるのですが、学芸員の立場として、それだけで本当にいいのかという疑問がありました。しかしながら、今回のプロジェクトでは調査結果をどう読み解くのか、そのヒントを得たような気がします。例えば、今回の博物館・美術館の利用と来館者の生活環境の密接な関係性について、もはやマーケティング の領域にとらわれず社会施策として取り組むべきではないのかなど、様々に考えを巡らせるいいきっかけとなりました。

何となく感じていたことが改めてインタビューや数字で明らかになってショックだった

今回の結果をうけて、具体的にはどういった企画や取り組みをうっていきますか?

釋さん学芸員が博物館・美術館の担い手であり、来館者との接点であるということを改めて考え、学芸員による連続講座という企画があがりました。また、今回の職員ワークショップのように館の境界を超えて集まり話あえる場の設定が定期的にできるといいなと思います。その人となりや博物館・美術館が担うべき仕事についての理想像など、じっくり話あうことでブランドも明確になりましたし、互いの館のいろんな魅力を知ることができました。それ以外にも、今回得た結果からは、こんなことしてみようのヒントがいろいろ読み取れるような気がします。

船越さんこれまでは、展示1つとっても自分たちが良かれと思う方法で行ってきました。しかし今後は、例えば発見のネタを仕込んだり、展示品の間に「発見の繋がり」をもたせたりなど、来館者が何に好奇心を刺激され、どんなところに喜びを感じるのかということを意識しながら構想を練ってみたいと思います。

釋さんインタビューでは、来館者の方がそれぞれのスタイルで博物館・美術館の見学を楽しんでいらっしゃいました。ですので、答えは一つではなく、たとえささやかでも、お客様が選べる多様な選択肢を提供することが大切だと感じました。

大阪市の博物館がこれからどう変化して行くのか、私も楽しみにしています。

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